年末企画:辰巳JUNKの「2018年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 豊潤な作品が揃った黄金期

 世はSNS社会、差別問題の是非や線引きが毎日のように討論される時代だ。混乱のなか悩める人には、学園ドラマとしても秀逸な『親愛なる白人様』S2からこの言葉を贈りたい。「この世界は不可解な場所で、人間は最も奇妙な生き物だ だから物事が複雑に思えるならば、きちんと理解したことになる」。

 『侍女の物語』S2は怪物のような躍動を見せた。法によって主人公と娘が引き離されるエピソードが放送された当時、アメリカで議論を巻き起こしていたのはトランプ政権の移民親子分離政策だ。「社会を反映」などという領域はとうに超えている。

 残る4作は、すべて「家族と喪失」の物語だったように思える。『KIZU』も『ヒルハウス』も凍てつくような家族の系譜を描いている。「古き良き」、そう言われてきたアメリカの伝統的白人家庭像の崩壊を示すように。

 米国に潜伏するスパイ夫婦を描いてきた『ジ・アメリカンズ』ファイナルは、エレガンスで崇高だった。筆舌に尽くしがたい家族とアイデンティティの物語だ。そして、ある景色を前に発せられた主人公の言葉は、2018年アメリカドラマ界の締めくくりに相応しいかもしれないーー「妙な気分だ」。

 来年には巨頭『ゲーム・オブ・スローンズ』最終シーズンが放映され、ディズニーのストリーミングサービスが始まる。きっと、TV界の景色は大きく変わる。『ベター・コール・ソウル』の前身『ブレイキング・バッド』が打ち立てたドラマ黄金期は、2010年代と共にひとつの終わりを迎えるだろう。それはなんだか、とても「妙な気分だ」。今はひとまず、2018年の輝かしい名作たちに賛辞を贈りたい。

■辰巳JUNK
ポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマなど。 雑誌『GINZA』、webメディア等で執筆。
ブログ:http://outception.hateblo.jp/
ツイッター:https://twitter.com/ttmjunk

■リリース情報
『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ ファイナル・シーズン』
DVDコレクターズBOX  2019年1月9日発売
5枚組 ¥8,000+税
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