年末企画:藤津亮太の「2018年ベストアニメTOP10」 キーワードは「2人の女の子」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2018年に日本で公開&放送されたアニメ作品から10本を選出。第5回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

 (原稿登場順)
・『ポプテピピック』
・『リズと青い鳥』
・『さよならの朝に約束の花をかざろう』
・『若おかみは小学生!』
・『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
・『宇宙よりも遠い場所』
・『HUGっと!プリキュア』
・『DEVILMAN crybaby』
・『ゲゲゲの鬼太郎』
・『ゆるキャン△』

 女の子が2人。そこから物語が始まる。2018年のアニメ作品を振り返って、そんなキーワードが思い浮かんだ。その観点から、いわゆる“百合”ではなく、その関係性が生み出すドラマが印象深かった作品を中心に10作品を選んだ。

 そもそも1月に放送されると、あっという間に世間の話題をさらった『ポプテピピック』からして、ポプ子とピピ美という2人の女の子が主人公だった。30分枠なのに、前半で放送したものと(ほぼ)同じ映像を後半も繰り返すという前代未聞の放送スタイル。しかもポプ子とピピ美を演じるキャストは毎回変わっていく。そこまで攻めた内容でありながら、暴走するポプ子とそれを受け止めるピピ美という2人の関係性だけは不変だった。

 これに対し、変わらないと思えた2人の関係が変わらざるを得なくなる瞬間を繊細に描いたのが『リズと青い鳥』。これに対し映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』は戦乱や婚姻によって変転していく主人公と幼馴染の関係性が縦糸のひとつとなる。どちらも変わってしまったはずの2人の関係が最終的にどうなったかを描く終盤が印象に残る。

 一方、「1人だとできないことも2人ならできる」という関係性を描いた作品が『若おかみは小学生!』(映画版)、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』、『宇宙よりも遠い場所』だった。3作品の特徴は、いずれも「親の死」が物語のポイントになっていること。

 『若おかみは小学生!』(本作はTVも魅力的だが、本稿では映画にのみ話題を絞る)の主人公おっこは、交通事故で両親をなくし、祖母が女将を務める温泉旅館で“若おかみ”を始める。『ANEMONE』の主人公石井・風花・アネモネは、7歳の時、喧嘩をしたきり父が帰らぬ人となってしまった後悔を胸に抱えている。『宇宙よりも遠い場所』は主人公玉木マリ(キマリ)が、南極に行きたい小淵沢報瀬と出会うところから始まる物語。報瀬が南極にこだわるのは、母を南極で失っているからだ。そして、キマリと報瀬の出会いが、南極行きに向けてさらに旅の仲間を招き入れることに繋がる。彼女たちが喪の仕事に向き合おうとする時、「支え」にせよ「アンチテーゼ」にせよもうひとりの女の子がそこにいることが大きな意味を持ってくるのだ。

 ほかにも印象的な2人はいた。

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