戸田恵梨香とムロツヨシが過酷な現実に直面していく 『大恋愛』表裏一体の喜びと悲しみ

 「好きと嫌いは選べない」その言葉は、そのまま「健康と病」にも置き換えられるし、「幸せと不幸せ」にも当てはめられる。私たちは、自分の手で人生を選んでいるように思えて、実は何も選べていないのかもしれない。

 金曜ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)第3話は、主人公・尚(戸田恵梨香)に忍び寄るアルツハイマー病の恐怖と、その不安も含めてまるごと尚を明るく包み込もうとする真司(ムロツヨシ)の愛が満ち溢れる時間と、こぼれ落ちる瞬間が描かれた。

 「幸せを感じられるうちに」いつも走ってばかりの尚は、さらに人生のギアを上げていく。真司と一緒に美味しいものを食べ、飲み、踊る。もし、この先もずっと健康であることを前提としていた尚であれば、何気ない風景のひとつだったかもしれない。だが、今の尚にとっては、これ以上ない贅沢な時間だった。

 瞳をうるませて笑う尚。その涙に気づかぬふりをする真司。何も言わずとも、この幸せは長くは続かないことを、ふたりとも知っているのだ。嬉しいと悲しいはいつも表裏一体だ。愛を知り、幸せを知るほど、それをいつか失う苦しみがよぎる。だからといって、その愛を、その幸せを私たちは手放せない。その苦しみが来る日を1日でも先延ばしにすることを祈るしかできないのだ。

 「好きな小説のタイトル、母親の旧姓、真司が捨てられた神社の名前」ネットバンキングで本人確認のためにするような3つの質問は、まさしく尚が尚であることを確認する術。そして、真司が尚の頭の中にかけた鍵だ。狭いシングルベッドでふたりが額と額をくっつけて鍵をかけるシーンは、どんな官能的なベッドシーンよりも鼓動が高鳴った。

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