ムロツヨシ、本当の適役は“2枚目”? 『大恋愛』『今日から俺は!!』2人のムロを堪能できる秋

 この役柄、どこかブレイクする前のムロに近いものを感じずにはいられない。ムロツヨシ自身も、幼いころに両親が離婚。父親が親権を持ったのだが、親戚に預けて出ていってしまったという過去を明かしている。役者を志し、20年ほど続いた下積み時代には、数々のアルバイトを経験。本作についてムロ自身も「20代のときにやっていたバイトが、ほぼ今回の役の仕事になりますんで、重なる部分もあり、ちょっとだけ照れくさい気持ちもあります」と語っている。ラブストーリーの名手・大石静の完全オリジナル脚本なだけに、ムロツヨシの半生が少なからず反映されているのではと、深読みしてしまう。

 「“僕は幸せです”という顔をずっとしていました。悲壮感を消す作業をしていましたね」。いつもと変わらぬ明るさで幼少期を語るムロに、ついチャールズ・チャップリンを重ねてしまう。稀代の喜劇王と称されたチャップリンも、両親の愛情に恵まれない子供時代を過ごし、職を転々とした過去を持つ。「笑いとはすなわち反抗精神である」とはチャップリンの名言のひとつだが、打ちひしがれるような日々の中で、いかにまわりを笑顔にするかが、彼らには共通しているのではないだろうか。

 人生を通じて、それを考え続けてきた人の想像力は強い。きっとムロのコメディが心地いいのは、彼の持つ周りへの愛に満ちあふれているからなのだろう。「たまたま飲み屋で会ったおじちゃんとも“あなたを信用しています”というところから入る」、「友だちの定義は裏切られてもいい人」。彼の言葉に迷いがないのは、人と人とが笑い合うためには愛を求めるのではなく、与えることが出発点であることを知っているからに違いない。そう思うと、手のひらから砂がこぼれていくように記憶を失っていく恋人を、決して絶望せず健気に明るく支えていく間宮真司に、彼以上の適役はいなかったのではないかとすら思えてくる。繊細で、物静かで、愛情深い、2枚目。私たちの知らなかったムロツヨシがあぶり出される作品になりそうだ。ムロらしいムロと、知られざるムロ。この秋は、ムロでいっぱいだ。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54
脚本:大石静
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
出演:戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし(サンドウィッチマン)、杉野遥亮、小篠恵奈、黒川智花、橋爪淳、夏樹陽子、草刈民代、松岡昌宏
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/dairenai_tbs/
公式Twitter:@dairenai_tbs

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