『アンダー・ザ・シルバーレイク』監督が語るLAとポップカルチャー 「映画自体が僕にとっては非常に大切」

「常に自分自身にチャレンジしたいし、自分自身を怖がらせたい」

ーー『アメリカン・スリープオーバー』では青春映画、『イット・フォローズ』ではホラー、そして今作ではミステリーと、あなたは作品ごとに異なるジャンルに挑んでいる印象です。ジャンルにとらわれない作品を作ろうとする意識は監督自身の中にあるものなんでしょうか?

ミッチェル:僕自身、いろいろなジャンルに興味があるけど、ただ違うジャンルを作りたいというわけではないんだ。常に自分自身にチャレンジしたいし、自分自身を怖がらせたいという想いがある。自らを快適なゾーンから追いやって、もっといろいろやりたいという気持ちが強いんだ。それに、自分の境界線を広げたいという気持ちや、いろんなジャンルで実験したいという想いもすごくあるんだ。すべてのジャンルに対して「こういう映画を作りたい」というアイディアがあるから、全ジャンルの映画を作ってみたい。ある時点で、すでに作ったジャンルにもう一度トライして、全く異なるスタイルの映画を作ってみたいというのが、僕の願いでもあるんだ。今すぐにできることではないけれど、将来的にそうしたチャレンジができればいいなと思っているよ。

ーー劇中では『アメリカン・スリープオーバー』がパロディ的に使われるシーンがありましたね。

ミッチェル:『アメリカン・スリープオーバー』という作品は、ある種正直で、人生における可愛らしい時代を描いた映画なんだ。それをフィクション版にして映画の中で使うことで、「ハリウッドというのは、そういう美しいものも醜くできるんだよ」というものを見せるのに効果的だと思って使ったよ。すごく誠実で、可愛らしいものでさえ堕落させてしまうハリウッドの部分を表したいなと。自分の作品をもう一度使うのは、馬鹿馬鹿しいところもあるけれど、ユーモアがあって面白いなとも思ったね。

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督

ーー劇中では音楽、映画、ゲーム、ファッションなど、様々なポップカルチャーが引用されています。引用されているものは監督自身の好みに通じる部分もあるのでしょうか?

ミッチェル:自分の好みに通じている部分もたくさんあるよ。例えば、『大アマゾンの半魚人』は、僕自身が大ファンだからポスターを使ったんだ。ただ、すべてがそうというわけではない。自分の好みではないけれども、映画のストーリーにフィットするかどうか、あるいはキャラクターにフィットするかどうかで使っているものもかなりたくさんあるんだ。僕自身はポップカルチャーが大好きだし、ポップカルチャーを消費している人間だけど、作品のためにかなりリサーチもしたよ。

ーーポップカルチャーに対してある程度の知識がないと、完全に理解できない部分も多いように感じました。

ミッチェル:ただ、観客がつたっていける、ある種の“繋がり”、つまり、分析できて、解決に至る糸口みたいなものはあると思っている。ポップカルチャーが分かっていれば、より理解できることもあるけれど、そういった知識がなくても、映画のエッセンスや本質的な部分は感じてもらえるんじゃないかな。ある種の感覚やメッセージというのは、ポップカルチャーを知らなくても分かると思うし、逆に、ポップカルチャーへの知識がある人が答え探しをしながらこの映画を観ていると、罠にひっかかる部分もわざと作ってあるんだ。

ーーこれだけの引用は許可取りも大変だったのではないでしょうか?

ミッチェル:プロデューサーがたくさん仕事をしてくれたけど、僕自身は実際どのくらい大変だったかは分からないね(笑)。でも、彼らのおかげでこの映画が作れるようになったから、本当に感謝しているよ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
新宿バルト9ほかにて公開中
監督・脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオほか
配給:ギャガ
原題:Under the Silver Lake/2018/アメリカ/カラー/シネスコ/5.1ch/字幕翻訳:松浦美奈
(c)2017 Under the LL Sea, LLC
公式サイト:gaga.ne.jp/underthesilverlake

関連記事