浅野忠信、小栗旬、柳楽優弥……若手女優を支える主役級キャストたちの名演に注目

 芳根京子に土屋太鳳、平手友梨奈、さらには有村架純と、若手女優が主役を張った作品が立て続けに公開されている。映画の顔として作品を背負って立つ彼女たちの好演もさることながら、それらを支える俳優陣の活躍にも注目したい。

 芳根と土屋の激しい演技バトルが話題の映画『累-かさね-』では、彼女らを結びつける存在として浅野忠信が登場。マンガを原作とした愛憎劇の発端は、浅野が演じる舞台演出家にして女優のマネージャー・羽生田釿互にあると言っていい。

『累-かさね-』(c)2018映画「累」製作委員会 (c)松浦だるま/講談社

 本作での浅野は、狂言回し的ポジションであるのと同時に、2人の女の間に立つレフリー的な存在でもある。しかし公平な判定を下さない彼は、軽薄でいて慎重な、そして優しさと卑しさが同居した声音と目つきで、彼女たちをぶつかり合いと駆け引き合戦へ導いていく。直情的な2人に対し、浅野のミステリアスで内面が見えない佇まいはこのポジションに見事にフィット。“狂気”を演じる女優2人も凄まじいのだが、それらに翻弄される浅野のリアクションがあってこそ、この“狂気”はより緊迫感を湛えたものとなっている。

『累-かさね-』(c)2018映画「累」製作委員会 (c)松浦だるま/講談社

 『累-かさね-』と1週違いで公開された、同じくマンガ原作の実写化作品『響 -HIBIKI-』では、映画初出演にして初主演の平手を取り巻く存在として、北川景子、小栗旬、柳楽優弥らが脇を固めている。常識はずれの女子高生作家・響(平手)を前に、彼らは右往左往する姿を見せながら、土台をがっしりと支えている。

 響の才能の第一発見者である編集者を演じた北川は、響役に大抜擢された平手と二人三脚で歩んでいくポジション。監督である月川翔作品には、『君の膵臓をたべたい』や『センセイ君主』で顔を見せている彼女にこそ、経験の少ない平手と作品をリードしていくこの役回りはふさわしい。凛としたその姿には、後輩の手を引く存在として十分な貫禄がある。

 『隣人13号』(2005)や『キツツキと雨』(2012)など、これまでにもネガティブ寄りな演技に定評のあった小栗だが、『銀魂』シリーズをはじめとし、華のある役どころを演じることが多い。しかし、もともと華があるだけに、本作での陰鬱な印象の小説家役などだと、それが“存在感”として作用している。響を取り巻く多種多様な人々が形成する、社会の縮図のようなこの物語には、社会的な各ポジションでの象徴的存在がなければならない。小栗もその一部分を、一手に引き受けている。

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