高畑充希は素晴らしいコメディエンヌだ 『過保護のカホコ』SPへの期待と2018年も止まらぬ活躍
特に高畑のコメディエンヌぶりが遺憾無く発揮されていたドラマが、1月2日に放送された『忘却のサチコ』。高畑演じる主人公・サチコは完璧な仕事ぶりから「鉄の女」と呼ばれる文芸誌編集者。結婚式当日に新郎が逃げてしまい大きなショックを受けるが、美味しいものを食べることで彼を忘却することを覚え、グルメに目覚める。
このドラマでは、バグを起こしたかのように行動する高畑の演技が実に面白い。特に話題となったのが、大御所作家(鹿賀丈史)にSMクラブに連れて行かれたシーン。「この状況、君には到底理解できないと思うが、君が思っているほど人は単純じゃない。実際に体験しないと分からないことがたくさんある」と教えを説かれるのだが、サチコはそれを純粋に受け入れてしまい、ビンゴ大会にて「お待たせしましたわ! さあビンゴ大会を始めますよ! まだビンゴカードをお持ちでない方は私の所まで取りにくればよろしいですわ!」と女王様風にムチを打つという天然っぷりを発揮した。
サチコが感情を表に出さないからこそ、そこから垣間見えるちょっとした仕草や間で、心の変化を表現するのは巧い。昨年の『過保護のカホコ』もどうかしている役だったが、カホコは実直だけど感情が豊かなのに対し、サチコはとにかく無表情。ただ結果的に、心の成長や、シュールでスッとぼけた感は共通していて、過剰だけど微笑ましく、そこから感動へ誘う表現ができるのは高畑ならでは。また女版『孤独のグルメ』と言われるほど豪快な食べっぷりもこのドラマの特徴だった。『忘却のサチコ』は大好評で、10月12日から連続ドラマ化が決定している。
そんな彼女の演技のルーツが、ミュージカルなのは言うまでもない。今年は2月に行われた「Disney on CLASSIC Premium 『リトル・マーメイド』イン・コンサート」でアリエル役を務め、8月20日に第2弾が放送された星野源MCによるお茶の間を舞台した特殊な音楽番組『おげんさんといっしょ』(NHK総合)では、おげんさん(星野)の夫であるお父さん役に。その際は面白い格好とは裏腹に、日本人にとってミュージカルが身近なものになってほしいという熱い想いを語り、生放送でその歌声を披露するなど、演技の振り幅に驚かされた。彼女が得意とする漫画的な緩急のついた感情表現として、ミュージカルはコメディエンヌの演技へと直結しているように思う。
また脇役として出演した3月30日放送の人気シリーズ『東京センチメンタルSP~御茶ノ水の恋~』(テレビ東京)では、店主の行動をクールに見守る和菓子屋のアルバイト役に。特に何をするわけでもないが、店主の恋の暴走につっこみを入れたり、慰めたり、大人の恋愛に若い目線で冷静に対応することで、ドロっとしそうな大人の恋愛劇をライトなものにしている重要なポジション。脇役としてノイズにならない、脱力したさりげない演技ができるのも魅力であり、高畑がドラマにいることの安心感を改めて感じさせた。
そんな高畑の代表作であるスペシャルドラマ『過保護のカホコ2018~ラブ&ドリーム~』が9月19日に放送される。史上最強の箱入り娘・カホコとそれを見守る美大生・ハジメ(竹内涼真)の恋の成長を描いた物語だが、スペシャルドラマではそれから1年後、波乱の新婚生活が描かれる。とにかくこのドラマでの高畑はエキセントリックに実直なコメディエンヌぶりが素晴らしいのは前述した通りだが、スペシャルドラマではカホコの生活の環境が変わる。愛する家族のために奔走するカホコがどのように成長し、その様子をどのように演じているのか、彼女のコメディエンヌぶりに注目である。また今年は映画『旅猫リポート』と『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の2本の公開が控えており、まだまだ勢いは止まらなそうだ。
(文=本 手)
■放送情報
『過保護のカホコ2018~ラブ&ドリーム~』
日本テレビ系にて、9月19日(水)21:00~22:54放送
出演:高畑充希、黒木瞳、竹内涼真、佐藤二朗、中島ひろ子、梅沢昌代、濱田マリ、夙川アトム、西尾まり、久保田紗友、三田佳子、西岡德馬、平泉成、時任三郎、横山歩、映美くらら
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
主題歌:星野源 「Family Song」
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ(5年D組)
演出:日暮謙
制作協力:5年D組
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/kahogo-kahoko/special2018/