本田翼のアクションの背景にある信念とは? 『絶対零度』小田切のキャラクター像を振り返る

 例えば、佐野岳演じる青年・湯川もまた、“法で裁けない”人間の1人であった。そんな彼を裁けないどころか、むしろ守らなければならないという警察官としての使命に対して、小田切は葛藤を抱える。「警察官として正しかったとしても、人として正しかったのかどうか自信がない。(中略)強くなりたい、もっと」と打ち明けた小田切。この“自信のなさ”を克服するものとして彼女が選んだのは“強さ”だったのだ。ただ、悪を憎むだけではなくて、自分自身が強くなること。処刑に走ってしまった田村は、ある意味において、“弱さ”を抱えていたともいえよう。田村には田村の壮絶な過去があったにせよ、法で裁けないならば、自分でその犯人を止めるべきだという思いに負けてしまった。“強さ”は悪から身を守るだけではなくて、己の中で沸き立つ憎しみをも適切に制御しうる。もちろん、ここで言う“強さ”とは精神的なものだけではなく、肉体的なことについても言えるのだろう。冒頭で述べたように、小田切が果敢にアクションを交えて闘う理由の一端がこうした信念から垣間見える。第4話でも、銀行強盗相手にほとんどたじろぐことはなく、堂々とした発言や振る舞いを見せつけた。

 そして、もう一つ“強さ”と並んで小田切を特徴づけるもの、それは“優しさ”である。“強さ”と“優しさ”と聞くと陳腐に響くかもしれないが、矛盾を抱えたミハンシステムとの付き合い方で見つけた彼女なりのあり方のように思われる。

 最近で言えば、第7話。張り込みをしている最中に、向かいのマンションのベランダに出され続けている少年を目撃する。彼のことを気にするも、「俺たちが立ち入っても何もできない」と山内から言われてしまう。それでも、何かをしたいという思いに駆られて、小田切はその少年にオムライスを作ってあげた。親からまともな食事を与えられていなかった彼。彼のような人間こそ警察官は助けるべきなのに、ミハンに従っているだけではどうにもならないもどかしさ。“強さ”だけではまかないきれない部分を、“優しさ”で補う。そうすることが意味のある振る舞いであるのかどうかは分からないけれど、どうにもならない現実を前に少しでも折り合いをつけようとする試みなのだろう。

 最近の連ドラで言えば、先の『奥様』しかり、『恋仲』(フジテレビ系)、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)などでの印象が強い本田であるが、『絶対零度』で井沢らとともにパワフルなアクションが見られるのも残りあとわずか。井沢らも背中に乗せ始めた例の人型のクッションもそうだが、彼女の暗い過去についての詳細も気になる。まだ語られていない小田切の秘密に、そのキャラクターの真髄を知る手がかりがありそうだ。

(文=國重駿平)

■放送情報
『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩(特別出演)
企画:稲葉直人
プロデューサー:永井麗子(共同テレビ)
脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市
制作:フジテレビ、共同テレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/zettaireido/

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