「ありがとう」の声続出 『半分、青い。』鈴愛を支え続けた仙吉の立派な人生を振り返る

 仙吉が戦地で楽しみにした太陽の差し込む時間は、奇しくも『半分、青い。』の放送時間と同じ。極限状態の戦争の中の癒やしと、日常の中のドラマを比較するのは、格が違うかもしれないが、人はほんのささいなことを生きる希望にすることができる。

 1920年に生まれた仙吉は、戦争で死と隣り合わせになり、命からがら帰ってきたと思いきや、務めていた楽器店は空襲で消滅。そこから家業の楡野食堂を継ぐが、愛する妻に早くに先立たれてしまうと、鈴愛に負けぬ波乱の連続の人生。挫折や苦悩を味わったことも多かったろう。それでも最期には「俺は年取ったけどええ仕事しとるなあ、俺は立派や」と自分を褒めて、この世を去った。

 公式サイトのインタビューのよれば、仙吉を演じた中村雅俊が最初に撮ったのは、第8話で楡野家が廉子のお墓参りに行くシーンだったという。少し声を震わせながら鈴愛の糸電話を持ち、空に向かって「廉子さ〜ん」と仙吉は叫ぶ。

 廉子がもういなくて寂しいと嘆く鈴愛に仙吉は、「廉子さんは、(胸を叩きながら)ここにもおるし、空にもおる。見守っとる。行きとるわしらをな空から見守っとる。あいつは生きてるときからそういうやつやった」と語った。その言葉通りきっと、今度は仙吉と廉子一緒になって、遠い空から鈴愛たちを見守ることだろう。

 早いことに『半分、青い。』も残すところあと約1か月半。鈴愛を救うためにかけた言葉は、テレビを通して鈴愛と似たような生きづらさを抱えている視聴者にもきっと届いている。

(文=阿部桜子)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳/間宮祥太朗、斎藤工、嶋田久作、キムラ緑子、麻生祐未、山崎莉里那
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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