ユースケ・サンタマリアの不器用さが切ない 『あなたには帰る家がある』いよいよ最終回へ

「どうでもいいんだよ、そんなことは。一緒に暮らして、同じ飯食ってたら、家族だろ?」

 ついに、魔性の女・茄子田綾子(木村多江)の過去が明らかになった『あなたには帰る家がある』(TBS系)第10話。息子・慎吾は、実姉の夫との間にできた子だった。だが、その事実を、茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)は「そんなことどうでもよかった」と一蹴。愛する人の子であれば自分とは血の繋がりがなくとも自分の子、ただ家族を幸せにしてやりたかっただけなんだ、と。

 太郎は、綾子の姉夫婦がいる通夜会場にも堂々と参列し、「うちの自慢の一人息子です」と慎吾を紹介する。出生の秘密に傷ついた慎吾の背中を、まだ外せない結婚指輪が光る左手で支えながら……。太郎が、どれほどの覚悟でこの会場に来たのかは、いつもよりピンと伸びた背筋から見て取れる。そして「帰るぞ」とふたりを促し、その居心地の悪い空間から綾子も救い出してみせたのだった。

 第4話で綾子が「あなたは私をかくまってくれた」と話していたのは、太郎のこうした男気を受けてのことだったのではないのか。それを「あの人は愛がどういうものかわかってないもの。自分のオモチャが急になくなって駄々をこねてるだけよ」という綾子こそ、愛とはなんだと思っているのか。

 いざというときすぐに駆けつけ、矢面に立って守ることではないのか。たとえ泥だらけになっても、相手のために体を張れることではないのか。周りが見えなくなっているときに、本気で叱ってくれることではないのか。“そばにいてほしい”という本音をグッとこらえて、「自由になれ」「自分で決めろ」と相手に選択肢を委ねることこそ、愛ではないのだろうか。

 だが正直、秀明(玉木宏)が真弓(中谷美紀)に会いたいと何度もカレーショップに来るのは「情けない男」と笑って許されるのに、太郎が綾子の働くお店に顔を出すだけで「怖い人」とストーカーまがいに見えてしまう部分はある。「なんでだ、俺にはわからないことばかりだ……」と涙をこぼす太郎。そこには、綾子を「おい」と呼び、「誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ」と怒鳴ったモラハラ夫の姿は見当たらない。

 「そんな時間もないんだな、母親って」カレーショップで一杯やっているとき、子供が生まれてからゆっくりと話すのは久しぶりだと話す真弓に、太郎がこう答えたのが印象的だった。以前の太郎ならば“母親なんだから当たり前だろ”的な言葉が返ってきたのではないだろうか。きっと、これまで太郎がモラハラめいた発言をしていたのは、真弓のようなまっすぐに対話する女性がいなかったからかもしれない。意図せず、パートナーに裏切られたという同じ痛みを持つ真弓と出会い、対等な目線で「どうしたら綾子は戻ってくる?」「終わったんですよ、茄子田先生」と何度も話していくうちに、彼がこれまで知らなかった女性視点が見えてきたのだろう。

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