ストップモーション・アニメは実写映画監督の新たな表現の場に? 『犬ヶ島』などの試みから考察

 劇場用アニメーションの主流はCGアニメーションが大きな割合を締めていく一方で、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』や『ぼくの名前はズッキーニ』、そして『犬ヶ島』など、ストップモーション・アニメーション作品の話題作も、近年増えてきている。2016年の第88回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた『アノマリサ』は、『エターナル・サンシャイン』や『マルコヴィッチの穴』などの脚本家チャーリー・カウフマンが監督。人形によるベッドシーンが長尺であることでも話題になった。ストップモーション・アニメーションとは、粘土や人形、切り絵などを、手作業で1コマずつ動かしてカメラで写真撮影していくという手法。日本でも、短編アニメーションなどで多く見られる。映像作品としての特徴や今後の可能性について、映画評論家の小野寺系氏に話を聞いた。

「ストップモーション・アニメーションの一番の特徴は“あたたかみ”を感じるという点ではないでしょうか。アニメーションの手法はいくつもありますが、CGではコンピューターの計算によってビジュアルを完成させるので、グラデーションや影が均質的なものになりがちです。また、今は2Dアニメも、多くがデジタルペイントになっているので、基本的にはクリアな印象の映像になります。そういった映像にはない、余剰的な部分、“ムラ”や“揺らぎ”がストップモーション・アニメの味であり、ジャンルとしての強みと言えるでしょう」

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』メイキング映像

 ストップモーション・アニメーションの制作会社として世界的に知られているのは、昨年日本でも公開された『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のライカ、そして、クレイアニメ『ウォレスとグルミット』や『ひつじのショーン』シリーズで著名なアードマン・アニメーションズがある。しかし、それ以外にも近年は、『ファンタスティックMr.FOX』に続く2作目のストップモーション・アニメーションとして、『犬ヶ島』を発表したウェス・アンダーソンや、前述の『アノマリサ』を手がけたチャーリー・カウフマンなど、実写監督が制作する例も増えている印象だ。その背景について、小野寺氏は以下のように説明する。

「ストップモーション・アニメーションは、粘土や人形など造形物を作って、それを少しずつ動かしながら1枚1枚写真で撮影しているので、非常に手間と時間がかかります。この手法で高いクオリティに到達した『KUBO』などを制作したライカは、3Dカラープリンターで人形を作っていたりと、新技術をとり入れ効率化している部分もありますが、それでもかかる時間は莫大です。しかし、時間や手間の問題さえクリアできれば、必ずしも専門的な設備が求められないので、実はもともと間口の広い手法でもあるんです。ウェス・アンダーソンやチャーリー・カウフマンは実写映画を撮っているので、被写体の動きやライティング、カメラの位置・動かし方などについては熟知している。ストップモーション・アニメを制作するときも、実写作品と近い考えで撮影しており、これまでに培ってきた演出の力を活かせるのではないでしょうか」

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