山田孝之と長澤まさみが恋に落ちる “笑い”と“ロマンチックさ”が絶妙な『50回目のファーストキス』

“笑い”が絶妙な『50回目のファーストキス』

 映画『銀魂』、『斉木楠雄のΨ難』などコメディ作品で人気を博した福田雄一監督が初めてラブストーリーのメガホンを取ることとなった『50回目のファーストキス』。本作は、アメリカで製作され2005年に日本公開された『50回目のファースト・キス』の日本版リメイクである。主演を務めるのは山田孝之と長澤まさみ。さらに脇を固めるムロツヨシや佐藤二朗といった福田組おなじみのキャストが集結した。

 ハワイでツアーコーディネーターをする弓削大輔(山田孝之)は生粋のプレイボーイ。そんな大輔はある日、藤島瑠衣(長澤まさみ)という女性と出会い恋に落ちる。だが瑠衣は、過去の交通事故の後遺症で記憶障害があり、新しい記憶は1日で消えてしまうのであった。事情を知った大輔は、あの手この手で瑠衣に毎日想いを伝える。大輔の努力と、ある思いつきを転機にとうとう2人は結ばれることになる。幸せな日々を送る2人であったが、ある日大輔の本当の夢を知ってしまった瑠衣は身を引くことを決意するが……。

 記憶障害と聞くと、難病を背負った女性との泣けるラブストーリーを想像してしまうだろう。しかし本作の監督は“福田雄一”である。原作の“笑って泣ける”ラブコメディという性質をしっかり日本版に昇華し、涙と笑いが同時にこみ上げるような器用で奇妙な作品が出来上がった。そのコメディの質は、ラブストーリーとは思えないほど徹底しており、特に福田組常連である山田と佐藤の掛け合いは、独特の間を有した福田監督ならではの”笑い”であった。一転、泣きを誘うシーンでは、本来、関係性を築くことさえ困難な大輔と瑠衣が、努力を重ねて築いてきた繋がりを誇張させたことで、2人に立ちはだかる壁の高さを感じ、胸が痛くなる。

 冒頭の回想シーン以外は全編ハワイロケの本作。星空や海といった絶景とラブシーンがリンクし、かなり過剰にロマンチックな演出が多い。そんなロマンチックさは、笑いに本気な福田組がラブシーンへハンドルを切ったときに良いバランスになるように綿密に作られている。ラブストーリーの醍醐味は、大輔と瑠衣の複数回に及ぶ“ファーストキス”シーン。ハワイで観光地になることも多いビショップミュージアムやドールプランテーションでのデートシーンは、短いシーンでありながら日本では体感できないようなスケールを感じる。夕日の綺麗なカカアコパークは今トレンドのウォールアートのすぐ側であり、SNSや雑誌で見たことのある場所もしっかり盛り込んでくれていた。

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