小松菜奈が『恋は雨上がりのように』で証明した女優としての“走り” 映画に愛される素質を読む

小松菜奈が『恋は雨上がりのように』で証明した女優としての“走り” 映画に愛される素質を読む

 何を考えているか掴めないというのは、次に何をするのか分からない、先が読めないということでもある。映し出される彼女の顔は、ときに見る者に感動を与え、ときに緊張を強いてきた。だからこそ特定のイメージに陥ることなく、さまざまなタイプの作品やキャラクターに、彼女はハマってきた。しかし惑わされてはいけない。彼女は女優である。当たり前のことだが、動いて、セリフを喋ってこそ、彼女の真価が発揮される。

 『恋は雨上がりのように』でも、彼女の想い人である店長は、その熱いまなざしを「睨んでいる」と誤解し、果ては「ゴミでも見るような目」とまで勘違いを重ねる。彼は、自身を前にした彼女の細かな変化をことごとく見逃し、彼女が意を決して「好きです」と言ったところでも、それを社交辞令的なものとしか受け取らない、なんとも鈍感な男。しかし私たちは、彼女がべつだん不機嫌なわけではなく、演じる小松自身が懸命に橘あきらというキャラクターを表現しようとし、そしてこの“恋心”を表現しようとしていることを見逃しはしないだろう。そのまなざしの強度や、微細な声の変化、そこにこそ女優・小松菜奈の目を向けるべき瞬間がある。見た目や雰囲気で役にマッチするだけでなく、積極的に役を表現しているのだ。もちろんこれは彼女だけでなく、私たちをいつも楽しませてくれる俳優たち(特に若手の)すべてに言えることだ。彼/彼女らの演技者としての一挙一動にこそ、言葉を紡いでいく必要があると思うのだ。

 たしかに本作でも小松菜奈は女優として素晴らしい“走り”を見せた。しかし女優である以上、スピードダウンすることや、橘あきらのように“雨宿り”することがあるかもしれない。しかしそんなとき、本作の店長のように彼女の背を押したい。つまりはファンとして一生ついていくと思いを新たにさせられる、そんな好演であった。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『恋は雨上がりのように』
全国東宝系にてロードショー
出演:小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、 戸次重幸、吉田羊
原作:眉月じゅん『恋は雨上がりのように』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)
監督:永井 聡
脚本:坂口理子
音楽:伊藤ゴロー
参加アーティスト:の子/mono(神聖かまってちゃん)、柴田隆浩(忘れらんねえよ)、澤部渡(スカート)
主題歌:「フロントメモリー」鈴木瑛美子×亀田誠治(ワーナーミュージック・ジャパン)(C)2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館
公式サイト:http://koiame-movie.com/

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