『あなたには帰る家がある』は現代のホラー? 中谷美紀の姿に見る“完璧”という呪い

「妻のつとめを果たさないくせに、要求ばかり、不満ばかり。何を被害者ぶってるの」
「なるほどね、浮気されたほうにも原因が……あるわけないだろーーーっ!」

 浮気した妻と、された妻。女として勝っているのはどっちか……とは、なんて悲しい闘いだろう。“された妻“の佐藤真弓(中谷美紀)と“した妻“の茄子田綾子(木村多江)の直接対決には、完全な勝者などいないのだ。異なるスタンスで妻を懸命に生きてきたふたり。共働きという形で家計を支え、もう一方は専業主婦として家族をサポートする。妻のつとめとは、その夫婦なりの正解があっていい。働けば家事は時短になる、家事に専念すれば収入は得られない。すべてを手に入れることなんて不可能だ。だが、人はどこかで完璧ではない現状を責めているのかもしれない。

 『あなたには帰る家がある』(TBS系)第4話は、それぞれの置かれているポジションによって正義が異なることを印象づける回だった。綾子と佐藤秀明(玉木宏)にとっては恋愛映画のワンシーンのように美しいもの。圭介(駿河太郎)にとっては真弓を傷つけないように黙っておくべきもの。自分も不倫をしている由紀(笛木優子)にとっては「それはそれ」と割り切るもの。太郎にとっては「されるほうに原因がある」と他人事。身近な人の不倫ひとつとってもこれだけの反応がある。人間関係は複雑だ。流れる川の水が、どこから湧いた水かなんて見極めるのが不可能なように、一つの事象には多くの人が作用し合って、誰かひとりを戦犯にすることはできない。

 真弓に「カピパラ」「家族のことなんて何も考えてない」と言われたこともそうだが、職場の上司(藤本敏史)に「パワハラちゃうからね」とネチネチ言われ続けてきたストレスだって、秀明を不倫に走らせたひとつの要因かもしれない。家でも職場でも役に立たないような扱いを受けた秀明にとって「あなたといて幸せ」と言ってくれる綾子は、疲弊した日々の“癒やし“でもあるが、生きていていいという“許し“にも感じたのではないだろうか。

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