2PMテギョンの演技は救いとなるーー『時間回廊の殺人』で見せた“元祖演技ドル”の風格

 『時間回廊の殺人』は、『プリースト 悪魔を葬る者』(2015年)で注目されたチャン・ジェヒョン監督がシナリオを書き、香港のレオン・ライとハン・チェヨン主演の『マッド・ドライバー』(2016年)や、オムニバス作品『ホラー・ストーリーズ』(2012年)を手掛けたイム・デウンが監督したミステリー・スリラーである。

 物語は、ある一軒家でまさに起こっている凄惨な殺人事件のシーンから始まる。最初こそ静けさがあるのだが、すぐにスリラー映画のクライマックスのような展開になり、そして場面は現代へと時をうつす。最後まで観ると、この冒頭のシーンが非常に重要になる。

 そのシーンで登場した一家の母ミヒは、夫と息子殺しの罪で逮捕されて25年が経ち、仮釈放されて、もとの家へとひとり戻る。実は息子は行方不明で彼女は無実の罪を訴えていて、今もその息子のことを探していたからこそ、その家へと戻ったのだった。そして身よりのないミヒのもとへ神父のチェがやってくる。

 このミヒを演じているのが、日本でも韓国映画として異例のヒットを記録した『シュリ』(1999年)に出演し、その後も海外ドラマ『LOST』(2004年〜2010年)のサン役でも話題となったキム・ユンジンだ。近年は『国際市場で逢いましょう』(2015年)で、ファン・ジョンミン演じる主人公の妻を演じた。彼女は『国際市場…』でも、特殊メイクでファン・ジョンミン演じる夫と出会ってから老夫婦になるまでを演じたが、本作でも、若かりし頃から年老いた姿までを演じる。

 ミヒのもとにやってくるチェ神父を演じたのは、あのTWICEのプロデューサーでもあるパク・ジニョンが生み出した野獣系アイドルとしてK-POPブームをけん引したグループ・2PMのテギョンだ。彼は、シンデレラのお姉さんの目線から描かれたドラマ『シンデレラのお姉さん』(2010年)や、スターを目指す若者たちの物語『ドリームハイ』(2011年)など、長らく歌手活動と並行して演技活動を行ってきたため、「元祖演技ドル」とも言われている。日本でも西島秀俊とキム・テヒがW主演したドラマ『僕とスターの99日』(2011年)に出演したことがあるが、映画出演は、2014年の『結婚前夜 マリッジブルー』以来となった。

 テギョン演じるチェは、ミヒの事件を追ううちに、惨殺な事件の起こったその家で、過去にも何度も行方不明者が出ていることをつきとめる。その謎が、少しずつ解けていく物語なのだとは思っていたが、さすがは韓国映画。スリラー映画は数多とあるが、予想のつかないアイデアに何度も驚かされた。また、「時間回廊」とのタイトル通り、もう一度映画を観返して自分も時間をさかのぼりたくなる作りになっている。また、チェ神父がなぜミヒの事件の謎を追っていたのかも、この物語を観る軸になっていく。

 映画の複雑でユニークな展開については、脚本のイム・デウンも自信があるようで、「韓国では新しくリリースするジャンル」と語っている。テギョンもこの物語を「パズルのよう」と評しているが、非常にこの表現がしっくりくる。

 緊張感のある作風の中で、テギョン演じるチェの存在や、チェが出ているシーンは、最初からどこか救いのように感じられるのだが、最後まで観てもやはりその感覚に間違いはなかったのだと納得させられた。正統派の役であったが、それがテギョンに自然とはまっていた。韓国の演技ドルはたいがいが芸達者で、クセの強い役がはまる俳優も多いのだが、逆に彼のようにまっすぐな役を極自然に演じられる存在は貴重なのかもしれない。彼は2017年9月から兵役に就いているが、除隊後の演技の仕事にも期待したい。

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