濱田岳と徳永えりの家族愛が沁みる “わろてんか隊”が戦地で貫いた笑いの信念

 1939年(昭和14年)、北村笑店は、中国に向かった軍隊の元へ“笑いの慰問団”を送り出したいという依頼を新聞社から受ける。NHK連続テレビ小説『わろてんか』第23週「わろてんか隊がゆく」では、タイトルが示す通りに風太(濱田岳)を団長とした「演芸慰問団わろてんか隊」が結成。かつての人気コンビ、キース(大野拓朗)とアサリ(前野朋哉)の「キース・アサリ」、万丈目歌子(枝元萌)と吉蔵(藤井隆)の「ウタコ・キチゾー」が復活した。さらに、上海に渡っていたリリコ(広瀬アリス)と四郎(前野朋哉)も合流し、「ミスリリコ・アンドシロー」も再結成する完璧な布陣で慰問へと臨むこととなる。

 風太たちが戦地で直面するのは、自分たちが兵隊に届ける笑いは“最後の笑い”であること。そして故郷を懐かしくさせる服装、言動は一切禁止され、役割の重さを痛感する。昨日笑ってくれたお客さんが、今日は死んでいるかもしれない。団長である風太は、自分たちが全うしてきた笑いを届けるべく、信念を曲げずに本来の寄席を敢行する。

 風太は兵隊を束ねる阿久津少佐(八十田勇一)に、軍服ではなく、本来の衣装で漫才をすることをお願いする。阿久津に却下されても風太は食い下がり、「少佐、笑いは薬です。どんなに苦しゅうてつらいことでも、笑えば人生乗り越えられると思うんです」と説得する。風太の考え方を変えたのは、日本で帰りを待つ妻・トキ(徳永えり)と娘・飛鳥(岸田結光)の存在。本来、軍に従うのが風太の役目だが、兵士一人ひとりにも当然家族がいる。「代わりに内地の家族に渡してほしい」と芸人の元に集まる手紙が、風太の心を動かしたのだ。

 わろてんか隊は渾身の“笑いの薬”を兵隊へと届け、無事日本へと帰国する。そこで風太を待っていたのは、トキと飛鳥。団長として北村笑店の看板を背負い、国のため戦地へと体を張って任務をやり遂げたからこそ、家族の優しさが沁みる。風太はトキと飛鳥を抱き寄せ「待たせたな。堪忍な」とささやく。戦地では張り詰めた表情が目立っていたが、家に帰りホッと笑顔を見せる風太。団長を務め上げ、北村笑店の専務としても、父親としても、貫禄のある男へと成長したように見える。そんな風太にトキが投げかけた「あんたが無事に帰ってきてくれたのが一番のお土産や」という言葉は、彼の心を優しく癒しただろう。

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