向井理、狂気の裏に隠されていた苦しみ 『きみが心に棲みついた』星名役で見せた繊細な演技

 また、この飯田とキョドコの図は、そのまま星名の姉や友人と星名に重なる。美しい顔も、もともとは親に愛されたいと願って整形手術を受け入れたもの。仕事も、恋愛も、誰かが必要としてくれることを求めた結果。だが、いくら人心掌握に勤しんでも、星名の本当に欲しいものは手に入っていない。しかし、表面的には、何もかも自分の思い通りになっているように見えるのだ。

 おそらく星名は、もうずっと前から人生に楽しみなんて期待していなかったのだろう。唯一、10年もストールを巻き続けてくれるキョドコだけが、むしろ希望だった。だが、そのストールも吉崎(桐谷健太)の出現によりほどかれてしまった。ストールのかわりにキョドコの首元に光るのは、1本の華奢なネックレス。それは自分が立ち入れない結界のしめ縄のようだが、まだまだ自分が結んだストールよりも細いことが唯一の救い。それをちぎって「俺と結婚してみる?」という提案は、より強いつながりをキョドコに求めたからなのだろう。それが星名の精一杯のSOSであることを、キョドコもまだ気付けない。唯一、本音をぶつけられ、自分とつながっていてくれると信じていたキョドコに「もう、この先ずっと分かり合える日は来ないと思います」「星名さんから離れたいんです」と言われたときの絶望は計り知れない。

 これまで、「ドS」「クズ男」と話題を呼んだ星名。だが、じっくり第8話をかけて見ていくと、柔和な笑顔や、ひとりになったときに見せる脆さがあることがわかった。人を翻弄する星名も、人にすがる弱い星名も、すべて真実。人は本当に複雑だ。そんな繊細な心情を体現した向井の演技が素晴らしかった。きっと現実社会でも、人を理解するには思っているよりずっと時間のかかることなのだ。そして、思い通りにいっているように見える人こそ、誰にも言えない苦しみを抱えているかも……その想像力が、共依存ではなく、共存していくためのヒントなのだろう。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
TBS火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』
毎週火曜22:00〜放送
出演:吉岡里帆、桐谷健太、石橋杏奈、ムロツヨシ、鈴木紗理奈、瀬戸朝香、向井理
原作:天堂きりん「きみが心に棲みついた」「きみが心に棲みついたS」(祥伝社フィールコミックス)
脚本:吉澤智子、徳尾浩司
プロデューサー:佐藤敦司(ドリマックス・テレビジョン)
演出:福田亮介(ドリマックス・テレビジョン)
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/kimisumi/

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