『バーフバリ 王の凱旋』は歴史に残る娯楽超大作だーー黒澤明やジョージ・ルーカスの精神を受け継ぐ

 のちに『スター・ウォーズ』を撮ることになるジョージ・ルーカスは、映画を学んでいた大学時代、同級生たちの間で黒澤明監督の『七人の侍』が話題になっていたのを、冷ややかな目で見ていたという。しかし、ルーカスが実際に作品を見てみると、途端に熱烈なファンになってしまった。おそらくルーカスは、黒澤映画がここまで娯楽に徹したものだと思っていなかったのだろう。そこには「日本の精神性」のような、文化の特殊性を強調し、前面に押し出してくるような押し付けがましさはない。なかでも『用心棒』は、ハリウッド製西部劇をも取り込み、多様な表現を組み合わせた娯楽の権化のような作品である。

 『スター・ウォーズ』に影響を与えたのが黒澤映画であったことは、よく知られており、『隠し砦の三悪人』の設定を利用しているというのは、耳にタコができるほど語られてきたエピソードだが、そんなことよりも、様々な要素を取り込みながら、過激なまでに迷いなく娯楽表現への道を突き進む…そういう姿勢こそが、黒澤映画より受け継いだ『スター・ウォーズ』の本質ではないだろうか。

 本作『バーフバリ 王の凱旋』もまた、まさにその系譜に連なり、娯楽表現の極みに行き着くことで大成功を収めた、稀有な作品だといえる。ディズニー買収後の『スター・ウォーズ』シリーズは、王道の表現を離れ、独自の道を進み出したように思えるが、黒澤明監督やジョージ・ルーカス監督の精神は、本作でシヴァ神がバーフバリの肉体に乗り移っているように、S・S・ラージャマウリ監督に受け継がれたのだと思える。

 インド映画が、本作によって新たなステージへと進み、ハリウッドを含む世界の映画業界も、この作品に影響を受けざるを得ないはずだ。歴史に残るだろう、この真の娯楽超大作の出現を心から喜びながら、多くの観客とともに、劇中で叫ばれた「バーフバリ!」の歓声に参加したい。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『バーフバリ 王の凱旋』
新宿ピカデリー、丸の内TOEIほかにて公開中
監督・脚本:S・S・ラージャマウリ
撮影:K・K・センディル・クマール
音楽:M・M・キーラヴァーニ
出演:プラバース/ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、サティヤラージ、ラムヤ・クリシュナ、タマンナー/ナーサル
配給:ツイン
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公式サイト:http://baahubali-movie.com/

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