万千代の中に生きる政次の意志ーー『おんな城主 直虎』“おとわ”が直虎へと戻るとき

 46話の終盤で、万千代の中に確かに息づいている政次の意志が示された後、47話において、今度は直虎が、家康の言動に政次の姿を重ねる。そして家康と万千代が碁石を並べながら戦わずにすむ方法を練っていることを知り、かつての自分と政次を重ね、「そうか、そうなるのか虎松は」と涙ぐむのは、万千代の中に確かに政次が生きているということを認識したからであろう。

 直虎はかつて戦さから逃げようとして逃げられなかった過去、死んだ政次と、虎松(幼少の万千代)の身代わりに殺された名もなき幼な子、気賀で行方知れずになった龍雲党の仲間たちのことを振り返り、「戦さをせぬという戦さ」をするという形で彼らの「弔い合戦」をしたいと告げ、動き始める。城や家名を捨てることで、井伊谷の地と人々を守り抜き、「おとわ」として平穏な日々を過ごしながら虎松の成長を待ち、満を持したタイミングで、彼女は再び亡くなった人々の思いを背負う。おとわは、徳川を動かすことによって戦国の世までも動かそうとするタイトル通りの「おんな城主 直虎」に戻ろうとしている。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『おんな城主 直虎』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
作:森下佳子
出演:柴咲コウ、菅田将暉、小林薫、市原隼人、貫地谷しほり、井之脇海、阿部サダヲ、菜々緒、尾美としのり、高嶋政宏、和田正人、古舘寛治、尾上松也、市川海老蔵、柳楽優弥
制作統括:岡本幸江
プロデューサー:松川博敬
演出:渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
写真提供=NHK
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/naotora/

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