西島秀俊演じる夫は完璧な良い夫? 『奥様は、取り扱い注意』それぞれの夫婦の形

 だが、優里はいつだって“しっかりと見つめていた”。夫にも息子にも、必ず真っ直ぐ見つめながら話しかけていた。いつも背を向けて、目をそらそうとしているのは啓輔の方だ。息子の水泳教室の送り迎えを頼みたいと、優里が相談してきた時も、パソコンの画面から一瞬たりとも目を離さない。優里が家に戻ってきた時も、彼女が目線を向けると、瞬時に目をそらしていた。優里の真っ直ぐな瞳を見ないように、避けるように視線を外す。啓輔が彼女を見る時は、最もらしい理由をつけて、自分の意見を通す時だけなのだ。どこまでも“卑怯でずるい”。彼女の本当の願いに気づいていながらも目を瞑り続け、自分が彼女を“幸せにしてあげてる”と思い込んでいる。家という檻に閉じ込め、窒息寸前までに空気(自由)を奪う。

 勇輝は言っていた。「彼女たちが求めているのは、妻としてではなくて、人として、きちんと愛されることなんじゃないでしょうか?」と。経済的に困らせたことも浮気も、一度だってしたことないのに、不満を持つ優里が悪い。彼女が外に出たいと言うのは、僕と息子を愛していないからだ。とすべて優里のせいにして、自分の願いだけを一方的に押し付ける啓輔は、優里を妻としてしか見ていない。彼女は啓輔の妻である前に、大原優里と言う一人の人間である。彼女は夫の啓輔のためだけに、息子の啓吾のためだけに生きているわけでは決してない。

 さて、それぞれの夫婦関係と抱えているものが段々と見え始めてきた同ドラマ。だが、不思議と伊佐山家だけ見えてこない。それもそのはず、勇輝が完璧すぎるくらいに良い夫なのである。伊佐山夫婦の良好な関係性はこのまま続いていくのだろうか。

(文=戸塚安友奈)

■放送情報
『奥様は、取り扱い注意』
日本テレビ系にて毎週水曜夜10時~
出演:綾瀬はるか、広末涼子、本田翼、中尾明慶、銀粉蝶、石黒賢、西島秀俊
原案・脚本:金城一紀
演出:猪股隆一ほか
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/okusama/

関連記事