実写版『亜人』はなぜ“原作とは異なる展開”で成功した? アクション映画としての潔さを考察

 佐藤にも悲惨な過去があるものの、近年描かれがちな“観客が思わず感情移入してしまう悪役”というよりは、サイコパス的な“ザ・悪役”としての面が強い。特に漫画やアニメでは、ラストで悪役が改心したり救済される展開は珍しくないため、悪役が最後まで極悪非道を貫く勧善懲悪作品は、逆に新鮮だった。日本の漫画原作に多く見られる“繊細さ”というよりも、ハリウッドのヒーロー映画に近い“潔さ”を感じられたとでも言うべきだろうか。

 原作やアニメ版『亜人』では、幾重にも連なる人間模様が物語に深みを与え、ファンの心を掴んでいる。ただでさえ批判的な声が目立ちがちな実写版で、そうした重要なファクターを断ち切って再構成することは、製作陣としても相当な覚悟が必要だったにちがいない。だが、そうした思い切りがあったからこそ、原作やアニメの単なる焼き直しにならない、「正統派アクション映画」としての新たな側面を創造できたのだろう。

■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。Twitter

■公開情報
『亜人』
全国公開中
監督:本広克行
出演:佐藤健、玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈、山田裕貴、浜辺美波、品川祐、吉行和子、綾野剛
原作:桜井画門『亜人』(講談社「good!アフタヌーン」連載)
配給:東宝
(c)2017映画「亜人」製作委員会 (c)桜井画門/講談社
公式サイト:ajin-movie.com

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