谷崎潤一郎『神と人との間』『富美子の足』『悪魔』を一挙映画化 渋川清彦、吉村界人らが出演

谷崎潤一郎作品を一挙映画化

 近代日本文学の世界的文豪・谷崎潤一郎の作品である『神と人との間』『富美子の足』『悪魔』が、2018年に一挙映画化されることが決定した。

 谷崎の作品はこれまで、『痴人の愛』『細雪』『春琴抄』など数多くが映画化されてきており、増村保造をはじめ、市川崑や金田敬などが監督を務めてきた。今回、年齢もキャリアも異なる3人の気鋭監督が、谷崎の短編小説の中から自分の描きたい作品を選び、現代へと蘇らせた。

 『神と人との間』の監督を務めるのは、『グレイトフルデッド』『下衆の愛』の内田英治。谷崎本人と谷崎の最初の妻・千代、そして谷崎の友人であり、後に千代の新たな夫となる佐藤春夫の三角関係をモデルにしたと言われる物語で、渋川清彦と戸次重幸がW主演を務め、内田慈が共演に名を連ねる。なお本作は、10月25日に開幕する第30回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門への正式出品が決定している。

 『富美子の足』では、『リュウグウノツカイ』のウエダアツシが監督を務めた。“富美子の足”に強い偏愛を示す塚越役をでんでんが演じ、グラビアでも注目を集める女優・片山萌美が富美子役でその美脚を披露している。また、『ダブルミンツ』で映画初主演を務めた淵上泰史もキャストに名を連ねている。

 『悪魔』の監督を務めたのは、『光と血』『デイアンドナイト』の藤井道人。『太陽を掴め』『関ヶ原』の吉村界人が主演、大野いとがヒロイン役を演じるほか、前田公輝も出演する。

 また、監督を務める3人から映画に向けてのコメントが公開された。

コメント一覧

『神と人との間』内田英治監督

もちろん多くの日本人と同じように谷崎文学が大好きなのですが、作品以上に谷崎潤一郎本人に長年興味を抱いていました。とくに親友である作家・佐藤春夫と、谷崎の妻・千代を巻き込んだ大正の一大スキャンダル「細君譲渡事件」をいつか描きたいと思っていました。この最低で、しかし人間味溢れる三角関係をベースにした小説が『神と人との間』です。マゾヒスト的な、一方ではサディスト的なぐだぐだな恋愛。しかしそれもまた愛の形であり、谷崎にしか描けない世界観なのです。今回、谷崎作品を現代解釈するという企画において真っ先に本作をと考えたのは言うまでもありません。本作はラブストーリーでございます。それは恋愛と呼ぶにはクズすぎるかもしれませんが、やはりラブストーリーなのでございます。

『富美子の足』ウエダアツシ監督

谷崎を読むと正直に生きる登場人物たちが愛おしくなります。その耽美的な執着は、時に肉体的なフェティシズム、時に精神的なサディズムやマゾヒズムへと辿り着きます。常人には滑稽に見えてしまうその姿ですが、そこには確固たる覚悟と美学があり、真の意味での人間らしさが感じられます。 数々の名作映画を生み出してきた谷崎文学に今、内田監督と藤井監督と共に挑戦できたことをとても嬉しく思っています。僕が監督したのは『富美子の足』。偏愛される足を持つ女と、足を偏愛する男たちの姿を描いた…要するに足フェチのお話です。片山さん、淵上さん、そして、でんでんさん―。素晴らしく個性豊かな面々と、足と向き合い、足を舐め、足に踏まれる日々を過ごしました。正直に欲望へと突き進む、狂おしくも愛おしい人間たちの姿をぜひスクリーンでご覧ください。

『悪魔』藤井道人監督

「悪魔」とは、人間を誘惑し、災いをもたらす存在を称してそう呼ばれています。そして、大なり小なり私たちの周りにはその「悪魔」が存在します。谷崎潤一郎の『悪魔』を初めて読んだとき、100年以上前に書かれた作品にも関わらず、今の現代社会における人間の心の暗部に置き換えることが出来る普遍性に感嘆しました。 主人公の青年は、若くて美しい女子高生の照子という「悪魔」に出会い、次第に自我が崩壊していきます。 そもそも「悪魔」とは、自分に外的危害を加える存在なのか。もしくは、自分自身の精神に巣食う存在なのか?というテーマに向き合って作りました。

■公開情報
『神と人との間』
2018年公開予定
監督:内田英治
出演:渋川清彦、戸次重幸、内田慈ほか

『富美子の足』
2018年公開予定
監督:ウエダアツシ
出演:片山萌美、淵上泰史、でんでんほか

『悪魔』
 監督:藤井道人
出演:吉村界人、大野いと、前田公輝ほか

原案:谷崎潤一郎
制作プロダクション:TBSサービス
配給:TBSサービス
(c)2018 Tanizaki Tribute製作委員会
公式サイト:http://tanizakitribute.com

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