黒人女性数学者たちの伝記映画を「アメコミ風ミュージカル仕立て」として宣伝!? 立川シネマシティ『ドリーム』戦略

立川シネマシティの『ドリーム』戦略

 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ベイビー・ドライバー』が代表的な作品ですが、今作もここぞというシーンでバーンと音楽が流れます。

 1960年代が舞台ですから、当時のレイ・チャールズやマイルス・デイヴィスなんかの名曲も流れますが、メインで流れるのは“HAPPY”の大ヒットで知られる売れっ子プロデューサー兼シンガーのファレル・ウィリアムズが書き下ろした新曲。

 上司こてんぱんの痛快さ+手練れミュージシャンのR&B。この組み合わせが最強で「YES!」と思わずガッツポーズしたい高揚感が何度も訪れます。

 “リーゼントの歌姫”ジャネール・モネイが主要登場人物にキャスティングされていることからも、音楽に力を入れているかがわかります。ファレルは主題歌を書いたという程度ではなく、本作のために10曲も作っており、しかもアリシア・キーズ、レイラ・ハサウェイ、メアリー・J・ブライジ、キム・バレル、そして当然ジャネール・モネイと、大物アーティストたちが参加。サントラはマストバイです。

 このことを踏まえて、シネマシティでは音響にこだわっている、という劇場性格から本作を「アメコミ風ミュージカル仕立て」作品として売ることにしました。もちろん、ベテラン音響家・増旭さんに調整を依頼して贈る【極上音響上映】を行います。

 ここまで書いてきたことを、すでに劇場HPと会員向けメールで書き、劇場では特製推しポスターも掲示しています。

 そしてさらにこの後、もうひとつダメ押しで攻めようと思っているのが、これまで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー1&2』『シン・ゴジラ』『ベイビー・ドライバー』をWeb予約してご鑑賞くださった方向け限定に、本作の「推しメール」を出そうと考えています。

 これらの作品は痛快なエンタメ系作品で、かつ音楽が重要な役割を果たしたもの、というセレクションです。この全部をご覧になった映画ファンも多いでしょう。そしてこれらの作品を観たからといって『ドリーム』は観ようと思って下さるかわからないお客様でもあります。この作品群を愛している方に興味を持っていただけたら、今作はきっとうまくいきます。

 映画にとって音楽がどれほど重要かすでに体験して知っている方への文章と、そうでない方も含めて書く文章には大きな違いがでます。

 かつ、各作品の固有名詞や、重要場面についても触れられることで、文章の面白味と具体性を増幅させられます。

 さらに『シン・ゴジラ』のお客様には、大人気キャラのひとり、地味系超優秀リケジョ尾頭さんにも触れられます。『ドリーム』のヒロインはまさに尾頭系女子。“ハリウッド版尾頭さんスピンアウト作品”くらい言ってしまってもいいでしょう。

 とにかく映画の出来が間違いない時は、ちょっと強引でも、攻めたいところです。ここまで書いてきたことは、メインの宣伝ではほとんど触れられてもいませんが、観てもらえたらきっと満足度は高いのですから、少しくらいの強引さは許してもらえるはずです、たぶん(笑)。

 なぜ、僕が映画館のスタッフという仕事を、自分の仕事人生として選んだのか。それは、最高な映画に触れたときに友だちにもどうしても観てほしい、この感動を共有したい、という映画ファンなら誰しも感じたことのある気持ちが高まりすぎたからです。

 この気持ちがすべてであって、あとはやってることの体裁を整えて仕事っぽく見えるようにして世間をごまかしているだけです(笑)。

 結局は、宣伝だのなんだのと言っても、この“気持ち”をどう伝えるか、につきます。

 『ファイアbyルブタン』という、シューズ・デザイナー、クリスチャン・ルブタンが演出した“クレイジーホース”というパリの芸術性の高いストリップ劇場のショーを映画化した作品の中で、ルブタンがこう言います。

「存在しない喜びが、伝わることはない」

 これ以上の宣伝の極意はないでしょう。

 僕も伝えるスキルを磨き続けます。“喜び”の鮮度を保ちながら。
 You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)
 

(文=遠山武志)

■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。

『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:http://cinemacity.co.jp/

■公開情報
『ドリーム』
9月29日(金)、TOHOシネマズシャンテほか、全国ロードショー
監督:セオドア・メルフィ
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
製作:ドナ・ジグリオッティ、ピーター・チャーニン、ジェノ・トッピング、ファレル・ウィリアムス、セオドア・メルフィ
音楽:ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォールフィシュ
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ
配給:20世紀FOX映画
(c)2016Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie

 

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