広瀬すずのハマり役は“明るいヒロイン”だけではない 『三度目の殺人』『怒り』で見せた“暗”の演技

広瀬すず、ヒロインからの飛躍

 そんな思いがピッタリはまったのが、『三度目の殺人』で演じた咲江という女性だ。『怒り』で演じた泉は、内に秘める負の感情を“爆発”させることで、自身の心の均衡を保とうとしていたが、咲江は負の感情を外に出すことなく、内にくすぶらせ続けることで、なんとか日常をやり過ごしている。

 いっけんすると、感情を激しく表に出した方がインパクトは強いが、本当の怨念は、じっくりと心の内に寝かせ、溜めに溜めたところで静かに吐き出した方が、その威力は増す。その意味で『怒り』でみせた広瀬の演技が“暗”のなかの“動”なら、『三度目の殺人』は“暗”のなかの“静”ともいえる。全編を通して、内に秘める感情がブレることなく、静かに煮詰まっていくさまが、映画のトーンと重なり、より深い闇を表現している。この年齢にして、安定した“暗”を演じられる広瀬の表現力には脱帽だ。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■公開情報
『三度目の殺人』
9月9日(土)全国ロードショー
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:ルトヴィコ・エイナウディ
撮影:瀧本幹也
美術監督:種田陽平
出演:福山雅治、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功、役所広司
製作:フジテレビジョン アミューズ ギャガ
配給:東宝、ギャガ
(c)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ
公式サイト:gaga.ne.jp/sandome

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