菅田将暉、声優初挑戦で見せた新たな一面 『打ち上げ花火~』広瀬すずとの対照的な演技を読む

 あどけなさや、真っ直ぐさを、声の強弱を巧みに操り表現する菅田。あえて「そのまま」の声を活かす広瀬とは対照的だ。典道の抱える感情は、手に取るようによく分かる。彼の行動や言動、なずなに対する反応にはいちいち頷いてしまうほどだ。それはあからさまに彼が、なずなの前で顔を赤くしたり、一生懸命走ったりするからだけではない。菅田の発する声は、典道の“恋心を知った苦しさ”や“好きな人と一緒にいるドキドキ”まで観客に感じさせていた。“真夏の暑さ”や“夜の海の気持ちよさ”まで体感したのは筆者だけだろうか。目に見える映像の説得力だけでなく、それらに菅田の声が現実味を与えたのは間違いない。


 本作での菅田は声だけの表現で、中学一年生の一生懸命な恋心を演じきった。新たな菅田のイメージを確立したのではないだろうか。しかしまた次の作品で、それはあっさりと覆されていくのだろう。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』
全国東宝系にて公開中
声の出演:広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴、三木眞一郎、花澤香菜、櫻井孝宏、根谷美智子、飛田展男、宮本充、立木文彦、松たか子
原作:岩井俊二
脚本:大根仁
総監督:新房昭之
主題歌:「打上花火」DAOKO×米津玄師(TOY’S FACTORY)
(c)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
公式サイト:http://uchiagehanabi.jp/

関連記事