戸田恵梨香の“情熱”が、有岡大貴の成長へと繋がるーー『コード・ブルー』第6話で描かれた“落胆の向こう側”

 「落胆は、成長に繋がる」。8月21日に放送された『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)の第6話。「もう昔の自分じゃない。医者としてそれなりに経験も積んだし、感情をコントロールする術も身につけた。ある程度やれるという自信もある」という白石恵(新垣結衣)のナレーションから始まる。そして、「それでも、医療の現場では出会ってしまう。激しく揺さぶられてしまう自分に。そして、落ち込む。医者を続けている限り、私たちは……自分に落胆し続けるのだろう」と続くのだった。

 第6話のタイトルは“落胆の向こう側”。生意気で無鉄砲でうぬぼれや。プライドは高いが、誰よりも情熱がある。これは、フライトドクターである緋山美帆子(戸田恵梨香)の印象だ。一方で、何事にも冷静で、医療に対する情熱が感じられない。携帯ばかりいじっている生意気なフェロードクター名取颯馬(有岡大貴)。真逆の二人だが、名取はどこかフェロードクターだった頃の緋山を彷彿とさせる。第6話では、そんな名取の成長が緋山の過去とともに描かれた。

 富津高校の2年生・山口匠が、部活中に起きた事故で脳死判定を受けたところから物語は始まる。脳死とは、大脳および脳幹の全機能が完全に停止している状態のこと。息子の脳死を承諾した両親は、臓器提供を決断するのだった。そんな匠の担当医が緋山であり、緋山はサポートとして名取を手伝わせていた。

 脳死判定を受けた匠とその両親を見て、「でも、よかったですね。臓器が無駄にならなくて」と言い放つ名取。名取は、脳死判定を受けた患者を人として見るのではなく、ただの臓器として見ていた。そんなドライな名取に「あんたみたいな性格だったら、私も今ごろ“問題”起こしたりせず、もっといいポジションにいたかもな」と呆れたように笑う緋山。どんなときも、人をモノとしては見ずに、人として見続けてきた緋山だからこそ、名取の言葉に強く思うところがあったのだろう。

 “脳死”と“問題”といえば、『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE SECOND SEASON』(フジテレビ系/以下、2nd season)の後半で、緋山が成長するための要となったある事件を思い出させる。臨床的脳死診断で脳死の判定を受けた子供、野上翼の母親・直美(吉田羊)との間に生じた出来事だ。“患者に感情移入しすぎる”緋山は、直美のことを想って、DNR(延命拒否)の書類にサインをさせずに、翼の挿管を外してしまう。それが原因で、直美の兄・野上明彦(松田賢二)に訴えられてしまうのだ。直美との間に信頼関係があったからこそ、緋山がおった“心の傷”は深く、患者とその家族に怖くて向き合えなくなってしまった。その“落胆”を乗り越えて緋山は今、フェロードクターだった頃より何倍も成長している。そして再び患者とその家族に“寄り添える”医師になっているのだった。

 匠の臓器摘出に立ち会う緋山と名取。大勢の人たちが匠を囲み、黙祷を捧げる。その後、タイムスケジュール通りに次々と臓器が体内から取り上げられていくのだった。それを見ていた名取は「何か、すごいですね」と、まるで魚を捌きその中から内臓を取り出しているようなテンションでいう。そんな名取に、そっと1枚の紙を差し出し、ゆっくりと話し出す緋山。「たった1枚、たった6行」「匠くんの体は日本中に運ばれていく。この6行は匠くんが17年間生きた証し。そして、この一行一行にこれから生きる6人の未来が書かれてる」、と。

 臓器を摘出された後、お腹を閉じられた匠は安らかに眠っていた。そんな彼の頭を「してあげられるのは、これくらいだから」と優しく洗う緋山。そんな彼女のそばにいたことで、心の中に変化が生じていた名取は、匠の両親に聞いた彼の情報を次々と上げ出す。そして、「俺なりに、彼のことを知ろうと思って。そうすれば少しは、残された家族の痛みに寄り添えるかなって」と口にするのだった。“家族の痛みに寄り添う”。これは、2nd seasonの第8話“理由”で、緋山が直美と明彦、そして彼らの弁護士に、なぜDNRオーダーを取らなかったのか説明する際に放った叫び、「翼くんを救えなかった。だったらせめて、残された家族の悲しみに寄り添いたかった」を思い出させる。

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