『ウォー・マシーン』監督が語る、俳優・製作者ブラッド・ピットの魅力 「数少ない本物のスター」

 ブラッド・ピットが主演・プロデュースを務めた映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』が現在Netflixにて独占配信されている。実在の人物であるアメリカ陸軍将軍スタンリー・マクリスタルを描いたマイケル・ヘイスティングスの原作から着想を得た本作では、ひとりの将軍グレン・マクマホンの栄光と衰退を通して、現代の戦争の裏側に迫る模様が描かれる。リアルサウンド映画部では、本作のプロモーションのため来日したデヴィッド・ミショッド監督にインタビュー。戦争映画を撮ろうと思った理由や、役者とプロデューサーを兼任したブラッド・ピットの魅力、そしてNetflixの可能性についてまで語ってもらった。

「戦争の不条理さを体現するようなキャラクターを作り上げたかった」

ーーこれまで『アニマル・キングダム』や『奪還者』など重厚なバイオレンス作品を手がけてきたあなたが戦争映画を撮るというのは少し意外な気もしたのですが、もともと戦争を題材にした作品を撮りたいという願望はあったのでしょうか?

デヴィッド・ミショッド(以下、ミショッド):もともと僕はアメリカ軍に関する映画を作りたかったんだ。僕は“戦争=イラク、アフガニスタンでの戦い”だと思っていて、そんな戦場にいる兵士たちの姿を描きたかった。だけど、自分の中で映画として伝えるストーリーを見つけ出すことができずに、ずっと手をつけられずにいた。そんな中で出会ったのが、ブラッド・ピットの制作会社であるプランBから教えてもらった、マイケル・ヘイスティングスの原作だったんだ。

ーー原作を読んだ感想は?

ミショッド:自分がこれまで目にしてきたものとはまったく異なるものだった。従来の戦争ものにはなかったような要素がふんだんに盛り込まれていて、軍隊の描写に関してもものすごく厚みがあった。そこで僕は、大将や将軍といった上層部の人間と、実際に戦地で戦っている兵士たちの隔たりを描きたいと思ったんだ。上層部の人間たちの妄想めいた不条理な部分をコメディとして描き、実際に戦地で戦う兵士たちの体験を残酷でリアルに、そして悲しく描くことで、戦争に対する両者の根本的な捉え方の違いを伝えたかった。

ーーオーストラリア人であるあなたがアメリカ軍を描きたかったというのも少し意外な気がしました。

ミショッド:アメリカは戦争に関して、世界中に大きなインパクトを与えている。その影響は世界中の誰しもが受けていることで、僕はそのひとりとして、何かを発信する権利がある。それにオーストラリア軍は、ベトナムや朝鮮半島、中東などにも参戦し、アメリカに非常に近い同盟国として、アフガン戦争でもアメリカ軍と密接に行動をともにしてきた。僕はオーストラリア人として、そんなアメリカのリーダーたちに疑問を投げかける権利も責任もあると思ったんだ。

ーーそんなアメリカ軍のリーダーであるグレン・マクマホン将軍をブラッド・ピットが演じています。このキャラクターはどのように作り上げていったのでしょう。

ミショッド:まず第一に、ブラッド(・ピット)とは戦争の不条理さを体現するようなキャラクターを作り上げていきたいという話をしたんだ。とても大げさでカラフルな役柄にしたいとね。だから、原作の基にもなったアメリカ陸軍将軍スタンリー・マクリスタルをベースにしつつも、早い段階で違うかたちにしなければいけないと考え、名前も変えたんだ。自分のことを“第二次世界大戦で活躍した偉大な将校”と考えているようなキャラクターにしたかったから、ダグラス・マッカーサーやジョージ・パットンを参考にすることもあったし、葉巻を吸ったり、カウボーイのような要素があったりという、当時の肉体的な動作や仕草も取り入れることにした。スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』に登場する、スターリング・ヘイドンやジョージ・C・スコットが演じているようなキャラクターをこの作品でも登場させたかったんだ。

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