『ひよっこ』三男役、泉澤祐希に注目! 若き名バイプレイヤーの演技を読む

 次世代を担う若手俳優たちの青春劇として、その面白さに『あまちゃん』以来ハマる人が続出中のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』。ヒロインの谷田部みね子(有村架純)の幼馴染みの角谷三男役を演じる泉澤祐希が、今注目されている。「あの俳優は誰?」と囁かれることも少なくないが、かつては天才子役と呼ばれるほどのキャリアの持ち主で、数多くの作品に出演。今年はすでに『君と100回目の恋』と『サバイバルファミリー』の2本の出演映画が公開されており、実は売れっ子の若き名バイプレイヤーだ。じわじわとその実力を世に知らしめてきている、今年ブレイク必至の俳優・泉澤祐希の魅力について考察してみたい。

 『ひよっこ』で泉澤が演じる三男は、ヒロインのみね子と同様に茨城県の山村・奥茨城村に住む農家の三男坊。三男とみね子、そして助川時子(佐久間由衣)は、幼馴染の仲良し3人組で、共に青春を謳歌し、集団就職で上京した。三男は、みね子と時子とは別に米店で働き、何かあれば直ぐに2人の相談にのるムードメーカー的存在だ。友達想いで家族想い、そんな好青年を演じている。

 1149人の中から『ひよっこ』の角谷三男役をゲットした泉澤は、決してオーディションで彗星のごとく現れた若手俳優ではない。幼少期より子役としてテレビを中心に活躍。『白夜光』(2006年)では山田孝之の子供時代を、『モテキ』(2010年)では森山未來の中学時代を演じるなど、天才子役として様々なドラマに出演してきた。

 朝ドラは『すずらん』(1999年)『マッサン』(2015年)に次いで今回が3作品目。特に『マッサン』では、マッサンの姉の第三子で、後にマッサンとエリーの養子かつ後継者となる物語の重要な人物、岡崎悟役を演じ、素朴な風情と確かな演技力で注目された。その“素朴な風情と確かな演技力”というのが彼の良さであり、自身がよく言われるという「昭和顔」の影響もあってか、昭和時代の役に抜擢されることが少なくない。また、親しみやすい子供や学生など、自然な存在の役柄が実にハマる。

 世間の注目を集めたのが、芳根京子や森川葵など次世代の若手俳優が揃い話題となった2015年のドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)での合唱部部長役ではないだろうか。同世代の俳優たちとの共演で重要な役を演じ、また現代劇の学園ものということで、今までとは違う層の視聴者たちからも関心を得た。そのため子役からの脱却という意味では、2015年がターニングポイントとなった年だと言える。

 『ひよっこ』の前の朝ドラ『べっぴんさん』の主演は芳根京子であったため、『オモコー』リレーとしてファンの間では密かに話題となっていた泉澤の三男役。1960年代が舞台の『ひよっこ』で、素朴なルックスの好青年キャラは正にうってつけだ。「三男が大好きすぎて、ほかの誰かにやらせたくない」(引用:公式サイト)と話すほど、楽しんで演じているためか、劇中ではいつにも増して活き活きと輝いている。可愛くてしっかり者のみね子、感情的でスタイル抜群の時子、そして素朴で好青年の三男という絶妙なバランス。さらに、時子に一途な片想いを寄せている三男の姿は実に健気であり、ファンが急増するのも当然の結果だ。

 そんな3人の関係が色濃く出たのが、女優のオーディションに落ちてしまい、傷心していた時子を三男とみね子が励ますシーンである。いろんな感情が集約された朝ドラ史上ベストに入る名告白シーンではないだろうか。自分の恋愛感情を犠牲にしてまでも時子を励ます三男の優しさ。思いっきり振られ内心傷つきながらも、時子を想い支え続ける、そんな三男がかっこ良すぎるのだ。この微妙な感情を泉澤の自然な演技で見事に表現し、相手を光らせつつ自分をも印象づけるという実に巧みな演技であった。

 現在放送中の東京篇では、みね子と時子は向島電機、三男は米店へと別れてしまい、三男の出番はめっきり少なくなってしまった。しかし、ちょいちょい挟まれる安部善三(斉藤暁)と娘さおり(伊藤沙莉)に翻弄される三男という、米店チームの掛け合いは実にコミカルで面白い。コメディパートとしてインパクトを残し、幼馴染み3人とは違ったチームプレイで演技の幅を見せている。

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