『PRODUCERS' THINKING “衝撃作"を成功に導いた仕掛け人たちの発想法』鼎談(後編)
「人間、本気が一番面白い」 藤井健太郎 × BiSHアイナ・ジ・エンド × 高根順次『PRODUCERS' THINKING』鼎談後編
アイナ「好きなことを一生懸命やっているのって、かっこいい」
高根:最後に、改めて『PRODUCERS’ THINKING』を読んだ感想を教えてください。
アイナ:これまでMVの撮影とかで、監督さんと打ち合わせで話をすることは多かったので、なんとなく監督が一番偉い人って思っていたけれど、プロデューサーもいないとダメなんだなって気付きました。監督とプロデューサーが、お母さんとお父さんみたいにいて、はじめて良い作品になるんだなって。あと、映画作りについて、これまでイメージしてきたのとは別の視点から学ぶことができたのも良かったです。恥ずかしいんですけれど、今までわたし、映画のエンドロールに出てくる「配給」って、現場のご飯係のことだと思っていたんです(笑)。ご飯は大切だから、あんなにしっかりクレジットされているんだなって思い込んでいました。
藤井:たしかにご飯は大切(笑)。
アイナ:あと、高根さんが、水曜日のカンパネラさんとかSuchmosさんが売れている明確な理由はわからないと仰っていたのも驚きました。プロデューサーの人は、みんな何もかもお見通しだと思っていたんですけれど、こんなに試行錯誤されているんだなって。でも、これからはさっき藤井さんが仰っていたように、好きなことを突き詰めていくことが大事になると思うので、わたしもそうありたいなと。好きなことを一生懸命やっているのって、かっこいいですから。
藤井:僕は帯に書かせてもらったことと重なるんですけれど、高根さんが前書きで書いていたように、プロデューサーって特殊な才能がなくても自分が面白いと思うことややりたいことを具現化できる良い職業で、やりがいがありますよね。たとえばキャスティングで、この人とこの人を合わせてみたら面白いとか、このストーリーをこの監督に撮ってもらったら最高だとか、そういうのを考えるだけでも楽しいのに、具現化することができるんだから、好きな人にはたまらない職業だと思います。漠然となにか面白いことがしたいと考えている人は、飛び込んでみると良いかもしれない。
高根:たとえば、自分で小説を書こうとして、実際に書いてみたらクソかもしれないけれど、プロデューサーになったら花開く可能性はありますよね。僕は正直、今もクリエイションできる人に対する憧れは強いけれど、その憧れこそが、プロデューサーとしても大事なポイントだと思っています。
藤井:そこからクリエイターやパフォーマーに対するリスペクトが生まれますからね。しかも、プロデューサーの仕事ってDJ的なところがあって、言ってみれば情報の選択とその組み合わせ方なんですけれど、その要素ってカルチャーと呼ばれるものの非常に大きな部分を占めていますよね。そういう意味でも、プロデューサーの仕事はすごくやりがいがあるし、この本を読めば、その魅力は十分に伝わるんじゃないかと思います。
(構成・写真=松田広宣)
■商品情報
『PRODUCERS' THINKING “衝撃作"を成功に導いた仕掛け人たちの発想法』
著者:高根順次
価格:1,600円(税抜き)
発売日:4月28日
判型:四六判
頁数:288ページ
発行:株式会社bluerpint
発売:垣内出版株式会社
【高根順次】
1973年生まれ。大学卒業後、AVEXD.D.(現・AvexGroup)入社。半年間のAD生活で社会の洗礼を受けた後、スペースシャワーTVへ転職。フリーペーパー『タダダー!』の立ち上げに始まり、『スペチャ!』『爆裂★エレキングダム』他、数多くの番組をプロデュース。現在はライブ動画をウェブ上にアーカイブするプロジェクト『DAX』やヒップホップ番組『BLACKFILE』を担当。一方で『フラッシュバックメモリーズ 3D』をきっかけに映画製作に乗り出し、以後、『劇場版 BiSキャノンボール2014』、『私たちのハァハァ』、『劇場版 BiS誕生の詩』,『WHOKiLLEDIDOL? SiS消滅の詩』と、2017年春までに4本のプロデュース作を劇場公開している。
【目次】
第1章 プロデューサーとはどんな仕事なのか?...『フラッシュバックメモリーズ 3D』
第2章 プロデューサーに必要な資質、考え方、行動...『私たちのハァハァ』
第3章 共に戦える“仲間”の見つけ方...『劇場版 BiSキャノンボール2014』
第4章 プロデューサーが持つべき〝覚悟〞...『監督失格』甘木モリオ
第5章 “奇跡の作品”が生まれるまで...『この世界の片隅に』沢村敏
第6章 作家主義を成立させるために...『恋人たち』深田誠剛、小野仁史
第7章 インディーズ映画のサバイバル術...SPOTTED PRODUCTIONS 直井卓俊
第8章 社会問題とドキュメンタリーの接点...『FAKE』木下繁貴
第9章 王道回帰のドラマ作りが視聴者を呼び戻す...『逃げるは恥だが役に立つ』那須田淳、峠田浩
第10章 テレビと映画の垣根をどう捉えるか...『ディアスポリス』横山蘭平、西ヶ谷寿一
第11章 コンテンツの魅力を最大化する“場所作り”...立川シネマシティ 遠山武志
第12章 今、日本のエンタメ界に求められる作品とは...東京国際映画祭 矢田部吉彦
第13章 批判と向き合うための心得...無人島プロダクション 藤城里香
第14章 “ダイヤの原石”を見つけ出す方法...水曜日のカンパネラ 福永泰朋(Dir.F)