女同士のドロドロを描く『過激派オペラ』が、清々しい青春映画となった理由

『過激派オペラ』の清々しさ

 劇団の立ち上げ、劇団内恋愛、旗揚げ公演、主役(恋人の座)争い、資金難、ナオコを支えてきた理解者の離脱などが、回想シーンやモノローグを使わずに、時間軸通りに描かれる。そこには江本監督の「ドキュメンタリーのように生々しくしたかった」という意図がある。現場で脚本からどんどん離れていったという演出も、役者の生々しさを引き出すためだろう。それを可能にするためには、役者が台本に書かれたセリフを覚えて言うのではなく、演じるキャラクターになりきる必要がある。ナオコを演じる早織は、本人はしっとりとした美人女優だが、髪を短くカットして、別人のような風貌を作り上げた。江本監督は役者に「役を作る」「演技をする」のではなく、「自分自身を出してその人物になる」ことを求めていたというが、彼女は見事にその要求に応えている。彼女の変貌ぶりを確認するだけでもこの映画を観る価値はある。

 ナオコと劇団員たちの欲望が入り交じる狂騒の日々は、ほろ苦く、ありきたりな幕を閉じる。それでも何かを求め続けるナオコの愚かさこそが、この映画の清々しさの正体なのだ。

■須永貴子
インタビュアー、ライター。映画やドラマを中心に俳優や監督、お笑い芸人、アイドル、企業家から市井の人までインタビュー仕事多数。『NYLON JAPAN』『Men’s EX』『Domani』『GOHETE』『シネマトゥディ』『エイガドットコム』、映画プレス、劇場用パンフレットなどに執筆。

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『過激派オペラ』ブルーレイ
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『過激派オペラ』DVD

■商品情報
『過激派オペラ』
5月3日DVD&ブルーレイ発売
監督:江本純子
原作:『股間』江本純子(リトルモア刊)
脚本:吉川菜美、江本純子
出演:早織、中村有沙、桜井ユキ、森田涼花、佐久間麻由、後藤ユウミ、石橋穂乃香、今中菜津美、趣里、増田有華、遠藤留奈、範田紗々、宮下今日子、梨木智香、岩瀬亮、平野鈴、大駱駝艦、安藤玉恵、高田聖子
発売元:キングレコード
(c)2016キングレコード

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