『レゴバットマン ザ・ムービー』は驚きの映画だ! 批評的視点を獲得した、レゴ映画のカオス

『レゴバットマン』は驚きの映画だ!

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 その一方で、少年時代に両親を殺害された事件による精神的な傷から、他人と親しい関係を持とうとせず、本作では自宅のシアタールームでひとり好物のロブスターを頬張るという孤独な生活を送り続けるバットマンの内面も描かれる。これらバットマンにおける大テーマを明確に切り分けて、今まで以上に正面から扱っているのが本作の特徴なのだ。そしてそれらを、「鏡に映る自分自身を変えていくことで、世界を変えることもできる」というメッセージへと連結させることで、狂気と闘い続ける宿命を持たされた「バットマン」という存在を、子ども映画の倫理観のなかで救い上げようとするのである。

 本作のマニアックさは、「バットマン」単体の世界だけにとどまらない。スーパーマンなどの正義のヒーローチーム、ジャスティス・リーグや、ジャンルの垣根すら越えて、さらに強力な悪役たちも参戦する。キングコング、『ロード・オブ・ザ・リング』の冥王サウロンの目、『ハリー・ポッター』の宿敵である名前を言ってはいけない「あの人」、グレムリン、『オズの魔法使』の魔女…。小ネタとしては、クエンティン・タランティーノ監督『パルプ・フィクション』の劇中の会話のなかで言及された、タランティーノのファンですら忘れているだろう架空のヒーローチームの名前さえ登場するのである。このような細かな描写も含め、とにかく本作は、次から次にパロディーが飛び出してきて、その全てを認知することは、もはや不可能だろう。とくに近年のアメリカのCGアニメーション大作は、情報の洪水に溺れさせ、一瞬も飽きさせないものを作る傾向にあるが、レゴ映画は、その過剰さが一歩進んでカオスを生み出しているところが芸となっているように見える。

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 監督のクリス・マッケイは、人形を少しずつ動かして撮影する「ストップモーション・アニメーション」の手法で作られる「ロボットチキン」という、既存の人気作品を面白おかしく、過激なネタ満載でパロディー化したTVシリーズの製作にも加わっており、『スター・ウォーズ』を題材としたシリーズの監督を経験している。『レゴバットマン ザ・ムービー』の内容は、その作風の延長上にあるといってよいだろう。バットマンの相棒ロビンのきわどいコスチュームをさらに強調し、下半身の大部分を常に露出させていたりなど、ちょっとやり過ぎなネタが多く含まれているのも、この監督の資質からきているはずである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『レゴバットマン ザ・ムービー』
新宿ピカデリーほか全国中
監督:クリス・マッケイ
脚本:セス・グレアム=スミス、クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ、ジャレッド・スターン、ジョン・ウィッティントン
字幕版出演(声優):ウィル・アーネット、レイフ・ファインズ、ザック・ガリフィアナキス、マイケル・セラ、ロザリオ・ドーソン
吹替版出演(声優):山寺宏一、小島よしお、オカリナ(おかずクラブ)、ゆいP(おかずクラブ)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.
公式サイト:legobatmanmovie.jp

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