“天真爛漫”な広瀬すず、“優等生”の中条あやみ 『チア☆ダン』は今しか作れない青春映画だ!

 また、鬼女教師・早乙女薫子役の天海祐希は、裏の主役といって言いほど“オイシイ”演技を見せる。後半からアメリカを本気で目指し始めた時にガラッと鬼コーチへと変化するのだが、具体的な指導が厳しいと言うより、ダメな者は切り捨てるという感情論を持たない冷たさ。しかし、先生の裏での涙ぐましい行動が後々判明するのだ。作品によってはそういった裏を見せるのは野暮だったりするが、この映画ではそれが見事にハマり、感動へと導く。

 ほかにもチームのメンバーのキャラが立っていて、それぞれ欠点を克服していき笑顔を見せていく姿も実に清々しい。初期の主流メンバーである高飛車なバレエキャラの村上麗華(柳ゆり菜)が、悪態をついて退部をし、後半メンバーに復帰する伏線だと見せかけて、結局最後まで戻らない。普通の青春映画では見られないドライさは賛否両論あるとは思うが、ちょっと面白い展開だ。

 この映画では、頂点を目指すために彩乃が自ら悪者になっている。だが、部活を良くしようとするからこその言動だとみんな分かっているところが、衝突し合うばかりの青春映画とはひと味違う。また、彩乃が落ち込んでダークサイドに行きかけた時には、ストーカー男子高校生(健太郎)が突如現れ心情を代弁するなど、たまに入るギャグ要素が特徴的だ。そう言ったウェットな方向へ持って行き過ぎないところが映画を見やすくしている。

 そして最後のダンスシーン。そこまでは大会でのダンスシーンをあまり見せず、クライマックスで一気に見せるからこその迫力。広瀬は映画『海街diary』で見せたサッカーの高速ドリブルや、『ちはやふる』で見せた競技かるたの所作の美しさなど、持ち前の運動神経の良さをこれまでも存分に発揮してきていた。そんな広瀬含め、出演者全員が、必死ながらも楽しそうに演じる姿は、とにかく素晴らしいの一言に尽きる。

 最近の邦画は前後篇の二部構成が多い中、121分という限られた時間の中で3年間を描くには詰め込み過ぎな部分も否めない。しかし、今の世代による今しか作れない青春映画であり、出演者たちの魅力を存分に楽しむ作品として、最高の輝きを見せているのは間違いない。

(文=本 手)

■公開情報
『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』
全国東宝系にて公開中
出演:広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥、真剣佑、柳ゆり菜、健太郎、南乃彩希、陽月華、木下隆行(TKO)、安藤玉恵、緋田康人、きたろう、天海祐希
監督:河合勇人
脚本:林民夫
配給:東宝
(c)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
公式サイト:http://cheerdance-movie.jp/

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