中村蒼、正統派イケメンならではの笑い 『刑事ダンス』独自のアプローチを読む

『刑事ダンス』中村蒼の“笑い”のアプローチ

中村蒼&デカダンスメンバーのコンビネーション

 このドラマの主人公が、いまをときめくイケメン俳優・中村蒼というのも面白い。中村蒼は『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』や『せいせいするほど、愛してる』などで、主演俳優に迫るほどの人気を誇るイケメンを演じてきた。しかしながら、脇でこそ光るタイプという印象も、同時に抱かせてきた。ところが今回は、正統派イケメンとして頑張れば頑張るほど、滑稽さが際立つという絶妙な立ち位置で、初コメディ主演作をものにしている。リアルサウンドのインタビューでは、「脚本を読んでみたらすごく面白くて、僕が演技で笑いを狙う必要はないと感じたので、普段の調子を崩さずに演技ができました」と語っていたが、まさに普段通りの演技で真剣に熱血刑事を演じているからこそ、タツヤは周囲から浮き、天然アイドルとしての魅力が浮き彫りになるのだ。(参考:中村蒼が語る、『刑事ダンス』でコメディに挑戦した理由 「イメージを壊していくのも、俳優の仕事」

 タツヤは格好をつけて「考える前にやっちまえ」と言うが、考える間もなく流されているのが実際のところ。2話で元芸人の放送作家(梶原善)が「指示や計算だけで跳ねられるんだったら俺はこの仕事をしていない。どんなに努力したって、ああいう奴が飛び越えて行くんだよ、芸能界ってのはよ……」と説明していたが、タツヤの面白さは、演じる中村の計算をも越えたところにあるのだろう。笑わせるのではなく、笑われるというアプローチの仕方は、中村の役者としての引き出しを増やしたはずだ。

 また、彼を支える4人のメンバーの存在も見逃せない。中村が「みんな役そのもの」と言うように、実際の性格とキャラが被っているそうで、しかも役割分担もしっかりできているようだ。役を離れても5人は仲が良いらしく、そのコンビネーションが回を追うごとに磨かれていくのも、このドラマの魅力となっていた。5人は5人とも、今後はドラマとバラエティの両方で活躍できるはずだ。

 ドラマも終盤に近づき、だんだんとシリアスな刑事物としての色も濃くなってきた『刑事ダンス』。これまでのストーリーがすべて伏線となり、回収されていくのも見事な展開である。果たしてデカダンスは、某グループのように本当に解散してしまうのか? その行く末を最後まで見届けたい。

(文=本 手)

■放送情報
土曜ドラマ24『潜入捜査アイドル・刑事ダンス』
テレビ番組ほか、10月8日より毎週土曜深夜0時20分~0時50分(全12回)放送
出演:中村蒼、大東駿介、横浜流星、森永悠希、立花裕大、青山美郷、福地桃子、野間口徹、近藤芳正
脚本:オークラ、土屋亮一、大井洋一
監督:住田崇、佐藤さやか
チーフプロデューサー:浅野太(テレビ東京)
プロデューサー:佐久間宣行(テレビ東京)、阿部真士(テレビ東京)、 熊谷理恵(ラフ・アット)
制作協力:ラフ・アット
製作著作:テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/dekadance/

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