『青空エール』が覆す、少女漫画原作の定石ーー部活への情熱だけで描く青春はアリ?

 主人公つばさの前に立ちはだかるあかねは、一見『アオハライド』の高畑充希のように、「大介のことを誰よりも知っているのは私だから近付くな」といわんばかりの強力なライバルオーラを放つ。ところが彼女もまた、恋愛よりも自分に与えられたマネージャー職に徹するのだ。もうどこまで定説を覆すのだろうかとハラハラしてしまうほどだ。それでも怪我で練習を休んでいる大介とグラウンドの傍で話す場面、遠くから聞こえるトランペットの音に大介が反応することに気が付いた彼女の、淡い恋心が終わる瞬間を、安易な言葉を用いずに表現した点はグッとくる。

 今年は前述した『ちはやふる』2部作といい、春に総集編が劇場公開され秋から2期の放映がスタートする『響け!ユーフォニアム』といい、いわゆる“文化系スポ根青春映画”の当たり年だろう。今後この手のテイストの作品が増えていけば、ますますティーン向け映画の傑作も増えていくことだろう。青臭い雰囲気に恥ずかしがっている場合ではない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。

■公開情報
『青空エール』
全国東宝系にて公開中
監督:三木孝浩
脚本:持地佑季子
原作:河原和音「青空エール」(集英社マーガレットコミックス刊)
出演:土屋太鳳、竹内涼真、葉山奨之、堀井新太、小島藤子、松井愛莉、平祐奈、山田裕貴、志田未来、上野樹里
(c)2016映画「青空エール」製作委員会
(c)河原和音/集英社
公式サイト:aozorayell-movie.jp

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