もしも新しい神様が“女の子”だったら? 『神様メール』のユーモアと女性賛歌

 

 キリスト教では元来“神”は父、つまり男性であるとされている。さらに、新約聖書内のコリントの信徒への手紙には「男は神のかたちであり、栄光である」「女が男のためにつくられた」等とまで記されている。このような価値観が仮に現在の社会形成の基盤になっているとすれば、それは大変おぞましいことだ。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督はその仮説を提示し、男性中心主義を糾弾する。それこそが「新・新約聖書」で、新たな“神”が現れたとき前代未聞のハッピーエンドが新世界を包み込むことになる。これは大いなる女性賛歌映画なのだ。

 誠に不幸なことに、3月22日この作品の舞台ブリュッセルで過激派組織ISによる報復テロが発生し、またもや多くの犠牲者が生まれてしまった。ISの信じる神はキリスト教とは異なるが、こうした悲劇は今に始まったことではない。宗教を根にした争いや殺戮はこれまで人類が幾度となく繰り返してきたあやまちであり、今でも変わっていない。そんな愚かさについて、この愛の映画を観ると考えざるをえない。

■嶋田 一
87年生まれの映画ライター。

『神様メール』予告映像

■公開情報
『神様メール』【PG12】
5月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほかロードショー!
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出演:ピリ・グロワーヌ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ブノワ・ポールヴールド、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー
宣伝協力:メゾン、AWAKE
配給:アスミック・エース
公式サイト:https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/1119
(C) 2015 - Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

関連記事