菊地成孔の『知らない、ふたり』評:自他ともに認め「ない」が正解であろう、「日本のホン・サンス」の奇妙な意欲作

「あ、ひょっとして」感

 と、ここまで書いて、あ、ひょっとしてコレって「韓流を愛でる感覚=クールジャパンによって世界中から<カワイイ>扱いを受けている日本人だって、昔はフィリピン人を、今は韓国人を<純朴で可愛い>と思い込みたがる」に対する、痛烈かつクールな批評なのだろうか?だったら、もっと映画に面白さ=喰える感じ、が出そうな物です。これは、やりようによっては、相当面白いテーマに成り得るので。

「んー、でもなあ」感

 音楽に関しても、やっぱり不勉強でお恥ずかしいんですが、このアルプというユニットを知らなくて、プロフィールを読んだら、威勢の良い事がガンガン書いてあって、どんだけ実験的で先鋭的な凄いサウンドが鳴るのかと楽しみにしていたんですよ。でも正直、普通でした(笑)。学生にでも誰でもパっとできそうなミニマルミュージックに、リングモジュレーターとか倍音のちょっとしたノイズが入っているだけで、びっくりするような環境音楽だとか、これが恋愛映画に使われるわけ?というような音が流れるわけではなかった。

 とまれ、やっぱり変わった風合いの映画だし、過去の映画と比較しようと思っても、召喚する作品も思いつかない。だから新しい映画ではあると思うけれど、結局ワタシは、申し訳なさと悲しさが吹っ切れないまま(書けば吹っ切れる。等と言う事は無いので、予めこれは、約束された悲しさなのですが)批評を終わる事にします。

 本作が、日本のSNS世代以降の、感情表出不全というか、見た目は淡々としている恋愛模様を的確に描いて、小津映画などの系譜にあるジャパンシャイネスの斬新な傑作ということになったら、わたしの感覚が古いのでしょう。というか、ワタシは単に焼肉やビフテキの食べ過ぎなのかもしれません。「肉食系には向かない、スーパー草食系」とかなんとか、低能なまとめなんか絶対しませんけどね。NU’ESTと今泉監督双方の将来に期待します。

■映画情報
『知らない、ふたり』
監督・脚本:今泉力哉
出演:レン、青柳文子、韓英恵、ミンヒョン、JR、芹澤興人、木南晴夏
製作:日活 ソネットエンタテインメント アリオラジャバン
配給:CAMDEN 日活
宣伝:CAMDEN
公式HP:http://shiranai.jp
(c)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan ソネットエンタテインメント アリオラジャバン

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