クリステン・スチュワート、なぜ全米屈指の売れっ子女優に? 脱力感ただよう演技の魅力

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 『パニック・ルーム』(02)をはじめとする子役時代からクールなその眼差しで、ベテラン臭が漂っていたスチュワートだが、作品の選び方は思いのほかバラエティに富んでいる。『ランナウェイズ』(10)では伝説のロックシンガー、ジョーン・ジェット、一連の『トワイライト』シリーズでは吸血鬼に恋した人間の少女(そしてゴールデン・ラズベリー賞では最低主演女優賞を同作で2度受賞)、『スノーホワイト』(12)では戦う白雪姫、『アリスのままで』(14)ではアルツハイマー病に犯された母と対立する娘、日本では劇場未公開の『ロスト・ガール』(10)ではホームレスのストリッパー、そして山田洋二監督の『幸せの黄色いハンカチ』の翻案版『イエロー・ハンカチーフ』(08)で桃井かおりの役回りを演じたのも偶然ではない。桃井特有の気だるい雰囲気が、スチュワートの持ち味と合致しているのは誰もが認めざるを得ない。

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c) 2015 American Ultra, LLC. All Rights Reserved.

 アメリカでは素行の悪さであまり評判の宜しくない彼女が、只者ではないことを証明したのが、ジュリエット・ビノシュと共演した『アクトレス~女たちの舞台~』(14)である。ビノシュ扮する女優のマネージャーという役柄を熱演し、全米映画批評家協会賞といったアメリカ本国の各賞を受賞したばかりではなく、見事にアメリカ人女優として初のセザール賞の助演女優賞を獲得。本国ではオスカーとは無縁なスチュワートがフランスのジャーナリストから認められた証拠である。そうして認められながらも、『エージェント・ウルトラ』のような脱力系アクション・コメディというジャンルにも戻ってきてくれる所が妙に可愛いらしい。一見気難しそうに見えるが、懐は広い女優なのだ。

 かつてハリウッドに君臨した往年の大女優のような気品が漂う眼差しでファンを魅了しているクリステン・スチュワートが次に何を目指していくのか?
 
 その鍵を握るのは、かつて子役時代に『パニック・ルーム』で共演したジョディ・フォスターのような気がしてならない。子役から活躍し、紆余曲折を経てオスカー女優にまだ上り詰めたフォスターの生きざまを、(私生活も含めて)トレースしているような気がしてならないのは考えすぎだろうか……。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『エージェント・ウルトラ』
2016年1月23日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:ニマ・ヌリザデ
脚本:マックス・ランディス
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ビル・プルマン、トファー・グレイス、ウォルトン・ゴギンズ、コニ―・ブリットン
2015年/アメリカ映画/上映時間96分 /R15+/原題:American Ultra 
配給:KADOKAWA
Photo Credit: Alan Markfield/(c) 2015 American Ultra, LLC. All Rights Reserved. 
公式サイト:agent-ultra.jp

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