『ブラック・スキャンダル』スコット・クーパー監督インタビュー
「できるだけ容赦なく、冷淡に」スコット・クーパー監督が語る『ブラック・スキャンダル』のギャング描写
「ジーン・ハックマンには引退を撤回してもらって、是非一緒に仕事がしてみたい」
ーーバルジャーの恋人リンジー役のダコタ・ジョンソンも印象的でした。
クーパー:実はダコタ・ジョンソンの演技は一度も観たことがなかったんだ。実際に会った彼女は、非常に心のこもった女性で、年齢の割にはとても賢く、敏感な面を持っていると感じた。彼女なら、他の人の前では出さない、バルジャーの脆い部分を引き出せると思ったんだ。バルジャーの脆い部分を見せるのはとても重要なことだから、彼女は完璧だと思ったよ。女性の出番は少ないが、彼女を含め本作に登場する3人の女性たちは、バルジャーから異なる形で影響を受けている、非常に重要な役割なんだ。
ーーこの作品の世界観を構築する上で、ジャンキーXLによる音楽も非常に大きな貢献を果たしていたように思います。
クーパー:私は劇的な背景音楽が好きなんだ。今回彼が手がけてくれた音楽は、バルジャーの心理にある怒りを感じさせながらも、物語の進行に伴う恐怖感やクラシックの要素もあったりする。伴奏が何かを示唆するように感じられる映画もたくさんあるが、本作はそうではない。編集、カメラ、ゴア描写などもそうだが、観客には監督の存在をどんな形においても感じて欲しくないんだ。この作品では、トム(・ホーケンバーグ/ジャンキーXL)の力量のおかげで、ボストンの町全体に常に覆いかぶさるような、暗い空気感や脅威が備わった。
ーー撮影には前作『ファーナス/訣別の朝』に続き、日本人カメラマンのマサノブ・タカヤナギが参加されていますね。
クーパー:彼は素晴らしいカメラの名人だ。私とマサが共通して大好きな監督の1人が黒澤明監督だ。黒澤監督はカメラを通して劇的なストーリーを語る能力があり、レンズやテーマの選択においても、マサや僕にとって非常に魅力的なものがある。今回の作品は、もちろん黒澤監督の手が直接かかっているわけではないが、そういった日本からの影響があるのは確かだね。僕らは日本の映画を本当に愛しているんだ。
ーー今後一緒に作品を作ってみたいと思う俳優・女優はいますか?
クーパー:すでに一緒に仕事をしているけど、クリスチャン・ベール、ジェフ・ブリッジズ、ジョニー・デップともまた一緒にやりたいね。ジョニーとは、もしまた一緒にやるとしたら、もっとユーモアのあるもので、彼がどれほど好かれるような人物なのかがわかるような作品がいい。彼の演技に嘘や偽りがないことが現れるようなものだね。罪の贖いをしようとしている人物を描いた作品なんかがいいと思う。まだ一緒に仕事をしたことがない人で言えば、ケイト・ブランシェット、メリル・ストリープ、マリオン・コティヤール、ダニエル・デイ=ルイス、ホアキン・フェニックス、レオナルド・ディカプリオなどだね。あとはジーン・ハックマン。引退を撤回してもらって、是非彼と一緒に仕事がしてみたいね。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『ブラック・スキャンダル』
1月30日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ、ロリー・コクレイン、ジェシー・プレモンス、デイビッド・ハーバー ダコタ・ジョンソン
監督・製作:スコット・クーパー
配給:ワーナー・ブラザース映画
上映時間:123分/R15+
(c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト:https://warnerbros.co.jp/c/movies/blackmass/
■書籍情報
原作『ブラック・スキャンダル』
著者:ディック・レイア&ジェラード・オニール
訳:古賀弥生
角川文庫より発売中