菜々緒の“怖すぎる悪女ぶり”を描き切る『サイレーン』 最終回も大映ドラマ的演出で突っ走る?

 殺人鬼と化した菜々緒が怖すぎると話題の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジテレビ)がいよいよ最終回を迎える。

 この火曜夜10時の関西テレビ制作のドラマ枠は、かつては草彅剛が主演した『僕と彼女と彼女の生きる道』や、阿部寛主演の『結婚できない男』など、人間ドラマを面白く描く秀作が多く作られ、幅広い年齢層が楽しめる枠だ。しかし、視聴者の求めてくるクオリティが高水準なだけに、その評価も厳しくなりがちで、視聴率的には苦戦している時間帯となっている。そんな状況を見るに、背水の陣でのスタートとなったといえるのが『サイレーン』だ。松坂桃李、木村文乃という若手の人気役者を起用したドラマとは言え、山崎紗也夏の漫画原作はかなりハードなサイコサスペンスものなので、視聴者を選ぶ内容となっている。この挑戦的なドラマを支えるのが、社会現象になったドラマ『ずっとあなたが好きだった』で佐野史郎が演じた桂田冬彦に匹敵するぐらい、とにかく怖い悪女役がハマり過ぎている菜々緒の存在である。

 以前から、ドラマ『ラスト♡シンデレラ』の社長令嬢や、『ファースト・クラス』での罵詈雑言を吐きまくる縁故入社の編集部員など、ヒール役やらせたら現在若手の中で1、2を争う悪役女優の地位を確立している菜々緒。それは9頭身と言われている、足が長く、肩幅広く、顔が小さい、あの完璧なスタイルと、クールビューティーで目力のある美人顔のおかげでもある。完璧過ぎて、日常にいるだけで非現実的な雰囲気を醸し出せるのは、速水もこみちなどの超イケメン俳優にも通じるところがあるだろう。いささか演出過剰に思える悪女ぶりも、彼女の浮世離れしたルックスで演じると現実味を帯びてくるのだ。

 今回演じる殺人鬼・橘カラは、人間味が希薄で、計算高く人をコントロールするのが天才的である上、戦闘能力も高く、相手を殺すことでその人の持つ魅力を吸収する非情さを持っている。しかも、最初から顔面整形をカミングアウトしている謎の人物だ。ビジュアルだけでなく、感情までも人間を越え、ヒールを通り越したアンチヒーローと言っても過言ではないキャラクターとして描かれている。かつてバラエティ番組で、変なおじさんや、ひょっとこウーマンなど、今までのモデルキャリアが台無しになりそうなことを、表情を変えずに平然とやり切るプロ根性を垣間見せていたが、その度胸となりきり感が女優として完全に開花しているといえよう。

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