“極上音響上映”仕掛け人が語る、これからの映画館のあり方「ほかの視聴環境では味わえない体験を」

立川シネマシティ仕掛け人インタビュー

「映画を映画館で観る意味が問われる」

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ーー先ほど、短いスパンでいろいろな映画を上映することで、幅広いユーザーに応えていくというアイデアを仰っていましたが、「Hulu」や「Netflix」といったサブスクリプションサービスは、細分化したニーズに応えていますよね。それらについてはどう捉えていますか。

遠山:多くのひとが映画というコンテンツ自体にアクセスしやすくなるのは、大きなメリットですよね。また、すでに映画の告知にサブスクリプションサービスは積極的に利用されていまして、たとえば現在上映している『ガールズ&パンツァー 劇場版』で言えば、テレビシリーズをdアニメストアなどのサービスで見放題にしています。ただ、やはり映画館で映画を観るという選択肢が削られる面も否めません。いろいろな視聴スタイルができている中で、どうやって映画館に来てもらうかは、映画館全体にとっても課題で、そのための施策のひとつが、「4DX」や「MX4D」「IMAX」といった新たな体感的な規格なんです。

ーー映画をひとつのアトラクションとして楽しむ、という方向性ですね。極上音響上映、極上爆音上映にも通じる部分がありそうです。

遠山:映画館でしか味わえない体験を提供するというのはとても重要ですね。音楽ライブの現場が盛り上がっているといいますが、それはやはり多くの方が指摘しているように、その場にいかなければ味わえないものがあるからでしょう。映画館でいえば、立川シネマシティでやっている極上音響上映、極上爆音上映は、まさにそうしたコンテンツで、だからこそ多くのお客様に支持されているのだと思います。家庭だとそれほど音量は上げられないし、ヘッドフォンをして上げても、耳から聞くだけになってしまいます。音は耳から聴くだけではなく身体全体で感じるものです。バスドラムやチョッパーベース、大爆発やビルの破壊などの重低音を震動として感じるのは快感ですから。こういうテレビやスマホでは味わえない快感を生み出すため、大スクリーンにしたり、立体音響にしたり、椅子が動いたり水を吹き出すようにして、各社必死に取り組んでいるわけです。

 かつての映画館は映像コンテンツ鑑賞の唯一の手段・場所だったわけですが、やがてテレビが登場し、その後ビデオテープのレンタルが始まり、DVDなどのソフト販売が活発化し、いよいよネット配信が本格スタートして、単に「映像コンテンツを再生する場所」ということだけではやっていけなくなっています。これからは「映画を映画館で観る意味」を追求していかなければ、生き残っていけません。それは体感性の高い上映方式というだけでなく、作品の選定、チケット購入やWeb予約の利便性、外界とシャットアウトされるという「場」の価値の再定義、同じ作品を好きな人たちとの直接/間接的コミュニケーション、価格設定など、総合的な評価になるはずです。

 鑑賞するまでの過程の利便性は、配信サービスには絶対に勝てないですが、音や映像のクオリティ、そこに同じものを好きな人が一緒にいることが醸し出す雰囲気なんかは、映画館が負けることは絶対にありません。繰返しになりますが「映画を映画館で観る意味」が今後、映画館にはますます問われていきます。僕としては、まずはシネマシティにおける成功を目指してはいますが、そのことで映画館というもの全体が注目されることこそ、目標です。カッコつけているわけではなく、これからは映画館が映画館同士で争っているような状況ではないんです。

■高根順次
スペースシャワーTV所属の映画プロデューサー。『フラッシュバックメモリーズ3D』、『劇場版BiSキャノンボール』、『私たちのハァハァ』を手掛ける。

■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。

『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:http://cinemacity.co.jp/

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