宮沢りえとリリー・フランキーの演技論 宮沢「演じているときがいちばん深く呼吸できている」
「その感覚は、10代の頃からあったの?」というリリーの問いに、「劣等感とはまたちょっと違うんですけど、自分に自信がないんです。悲しいくらい自分に自信がない。でも、舞台の場合は、本番が始まるまでに、一応お客様からお金をもらって、観てもらうレベルまで達しなければいけないから、必死で稽古して……その忍耐力っていうか、持続力はだいぶついてきた気がします」と、現在の心境を明かした。その後、話題は、宮沢が主演した映画『紙の月』(2014年)の話に。「僕らが思っているりえちゃんが、やらなそうな役だった」と言うリリーに対し、「私のなかでは、意外なものに頑張って飛び込んだという感覚はなくて。『あ、やっと来たよ』っていうところはありました」と語る宮沢。さらに自身の性格について、「どっちかっていうと私は破壊的だし、何か自分が積み重ねてきたものがあると、いつの間にか(それを叩き壊す)ハンマーを持っている感じなんですよね」と分析するなど、自身の意外な一面を覗かせていた。
11歳のときにモデルとしてデビューした宮沢。その当時の心境を、彼女は次のように語った。「それまではハーフっていうことですごくいじめられていたし、自分の髪の色や肌の色が自分でも嫌いだったんです。だけど、初めてスタジオに入って、メイクをしてもらっているときに、髪の色や肌の色をすごい褒めてもらって。メイクをして年齢も不詳になって、それまでそこにいた自分がいなくなっていくのが、ものすごく嬉しかったんです」。その思いは、役者の道を選んだ現在も続いているという。「演じていて、自分が自分じゃなくなる瞬間を生きてるときが、もしかしたら、いちばん深く呼吸ができているような気がします」。そんな彼女を「チャレンジャーなのに奥ゆかしい」と称賛するリリー。さらに、「挑戦できる人はどっか気が弱くないとできない。自我の強い人は確立した場所を自分で決めやすいから、けっして挑戦しようとしないんです」と自説を披露しながら宮沢の活躍を湛えた。
その後、宮沢りえが出演する舞台『海辺のカフカ』の凱旋公演が9月17日より日本で始まり、その後もシンガポール、ソウルでの公演を予定していること、NHK BSプレミアムで放送され、好評を博したリリー・フランキー主演のドラマ『洞窟おじさん』の完全版が、10月1日よりBSプレミアムで放送されることを告知して番組は終了した。
(文=岩倉マコ)