世界が注目する中村敬斗が聴く音楽とは? 好きなブランド、初恋ーーフォトブック『Natural ナチュラル』を読む

 熱戦が続いた「FIFAワールドカップ2026」が終わって、約2週間。日本中を寝不足にさせた我が国の代表のなかでも、4戦1得点1アシストと活躍した中村敬斗は試合後もBMWやJAL、コーセーのパートナーとして起用されるなどピッチの外でも活躍している。

 そこでプレイだけでなく、ビジュアルやファッション、ライフスタイルまで注目される彼のこれまでから現在までの素顔を収めたフォトブック『Natural ナチュラル』(双葉社)に再注目したい。

 なんといっても、本作の見どころは撮り下ろしを含めた全222枚の写真だ。日本国内のみならず世界中でイケメンと称される中村のプライベートやトレーニング風景、肉体美を味わうファンも多いだろう。 しかし本著はプレイ中に見せない姿に迫ったコラムも読みどころである。

 まずは冒頭の「音楽とサッカー」というセクション。幼稚園の頃からブラジルが好きだったという彼が、人生で最初に好きになった音楽はサンバで、その中でもセルジオ・メンデス「マシュケナダ」がお気に入りだったらしい。しかもオリジナルだけでなく、ブラック・アイド・ピーズをフィーチャリングしたリミックス版を幼稚園の行き帰りやリフティングをしながら聴いていた……と、そんな日本男児が実在することに驚いた。

 それが自身のドリブルのリズムに関係しているという自己分析も面白い。さらにサッカー映画『ジンガ』のOST、クイーン「ドント・ストップ・ミー・ナウ」、エンリケ・イグレシアス「スベメ・ラ・ラディオ」といった洋楽が挙がったと思えば、EXILE「Yell」も幼少期の思い出として登場。彼がサッカーを通じて豊かな音楽体験を過ごしてきたことがわかる。今もラテンやサンバを好んで聴くらしい。

 また中村のファッション観にもフォーカスされている。彼の服装に大きな影響を与えたのは実兄で、帰国した際は一緒に買い物に行くほど。そして好きなブランドや色、中学校から使用しているという香水も明かされる。最初に使ったのはクリスティアーノ・ロナウドが使用していたジバンシー「π」で、現在は甘いバニラの香りに惹かれたというエンポリオ・アルマーニ「ストロンガー・ウィズ・ユー」を愛用。彼にとってフレグランスは気持ちを上げたり、整えたりするのに最適なアイテムなのだ。

 学生の頃から匂いにもこだわっていたというエピソードを読んで、私のような読者の頭に浮かんでくるのは「彼は学生時代にモテたのか?」という疑問だが、まったく本書は抜け目がない。ばっちり中学校の担任教師・川村先生にインタビューしているのだ。まさか先生もそんな取材を受けることになるとは想像もしていなかったことだろう。「カッコいいし、スポーツ万能、明るく面白い、クラスのヤンチャなムードメーカーだった」などの貴重な証言を読むことができる。

 それだけに留まらず、「Natural ナチュラル」には中村が最初に可愛いと思った女性についても書かれている。なんと彼の初恋(?)は日本人女性ではない。映画『ハリー・ポッター』に登場するハーマイオニー・グレンジャー、つまりエマ・ワトソンなのだ。小学校低学年の頃から『ハリーポッター』シリーズが好きだった影響だというが、幼少期の女性の好みからヨーロッパ志向だったのか……。

 当然サッカーについてのページも充実。特に過去に奪ったゴールやゴラッソ(スペイン語で「スーパーゴール」のスラング)の回想は興味深い。彼にとってシュートとは1秒にも満たない閃きや感覚、イマジネーションによって放たれるものであり、それは昨今もてはやされる「言語化」と逆行する概念だ。その「言語にならざる世界」を改めて言葉としてアウトプットしていることが面白い。

「他人の言葉を真に受けない」という中村の言葉を読んでいると、人間の言語化に絶対性などないのではないか、と考えさせられる。そんな幻想よりも自分の感覚やイメージを強くすることこそが大事で、言葉は後付け的に乗せられているにすぎないと「Natural ナチュラル」は示してくれているようでもある。

「ヤバい」じゃ伝わらない、もっと言語化しろ——。そんな世の中だからこそ、言葉になる前の「ヤバい」を育てることに意味があるのかもしれない。

 このように若くして世界を舞台に戦っているだけに、中村のエッセイには人生のヒントになる金言が散りばめられている。写真集として中村敬斗の魅力を堪能できるのはもちろん、世界を舞台に戦う一人のアスリートが何を考え、何を大切にしてきたのかまで知ることができる一冊。だからこそ、このフォトブックは「見る本」であると同時に「読む本」なのだ。

■書誌情報
『Natural サッカー日本代表・中村敬斗フォトブック』
価格:2,310円
発売日:2025年6月4日
出版社:双葉社

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