『キャプテン翼』がサッカー日本代表に与えた影響とは? 子どもたちに「世界と対等に戦う」イメージを見せた功績

 「FIFAワールドカップ2026」がついに開幕した。6月15日(現地時間では6月14日)、日本代表は強豪オランダ代表と対戦――2対2で初戦を引き分け、勝ち点1を獲得した。

 ところでこの、「日本代表が普通にワールドカップの舞台で戦っている」という現実が、かつては夢のまた夢だったということを、いまの若い人たちはなかなか理解できないかもしれない。

 転機となったのは、1997年、加茂周監督の更迭にともない、コーチから監督に昇格した岡田武史率いる代表チームの躍進だ。それまで、いわゆる「ドーハの悲劇」(1993年)を含め、アジア予選の段階で常に苦汁を飲まされていた日本代表だったが、このチームが、1998年、ようやく初のワールドカップ本大会(フランス大会)への出場を果たしたのだ(以後、現在にいたるまで、すべての大会に出場している)。

 実はこの時期の日本代表の選手たち(おもに1970年代生まれ)の多くが、子供の頃に読んだある漫画の影響を強く受けていたということをご存じだろうか。そう、高橋陽一の『キャプテン翼』である。

 もちろん、日本のサッカーが強くなった要因のすべてが、この漫画にあるといいたいわけではない(また、すべての選手が、『キャプテン翼』の愛読者だったということもないだろう)。

 しかし、それと同時に、漫画を読んで感動した多くの子供たちが、日本の少年サッカーの競技人口を増やし、そんな彼らには、「世界」に対するコンプレックスなど最初からなかった(さらにいえば、「世界と対等に戦う」明確なイメージを漫画から受け取っていた)といえなくもないのだ。

いまなお続く長期の人気シリーズに

 高橋陽一の『キャプテン翼』は、1981年から1988年にかけて、「週刊少年ジャンプ」にて連載された、サッカー漫画の金字塔である。

 主人公の名は、大空翼。物語は、彼の小学生時代から始まり、天才ゴールキーパー・若林源三、強烈なシュート力をもつエースストライカー・日向小次郎、そして、アーティスティックなプレイで翼と「黄金(ゴールデン)コンビ」を組むことになる岬太郎など、頼れる仲間やライバルたちと出会い、ともに成長していく様子が、熱く爽やかなタッチで描かれていく。

 小学生時代はセンターフォワードだった翼は、やがて、指導者のロベルト本郷の指示でミッドフィルダー(トップ下)に転向(このコンバートが、ある年代のサッカー少年たちを、MF志望に偏らせたともいわれている)。最初のシリーズはいったん1988年に終了するも、その後も、『ワールドユース編』、『ROAD TO 2002』、『ライジングサン』など、翼たちの成長と、その時々の現実のサッカー界の動向をリンクさせながら、現在も続編が継続中である(それゆえ、前述の岡田監督時代の代表選手だけでなく、あらゆる世代の選手たちに、いまもなお強い影響を与え続けている、ともいえる)

前代未聞(?)のネーム連載

 ちなみにこの『キャプテン翼』だが、シリーズ最新作である『キャプテン翼 ライジングサン FINALS』は、なんとネームの状態で連載されている(2024年から、公式webサイト「キャプテン翼WORLD」にて連載中。単行本は電子版のみ刊行中)。

 「ネーム」とは、本来は、漫画家が下描きに入る前に編集者に見せる、いわば「漫画の設計図」のようなもののことだが、この『ライジングサン FINALS』の「ネーム連載」についいては、作者(高橋陽一)の、「限られた時間の中で、物語を最後まで描き切るにはこれしかない」という判断によるもの(仮に完成原稿による連載を続けた場合、少なくとも40年はかかる計算になり、それは現実的ではないとのことである)。

 賛否両論あるかもしれないが、私はこの判断を正しいと思う。というのは、じっさいいまweb上にアップされている「作品」をご覧になっていただければわかるかと思うが、ネームとはいえ、かなり下描きに近い状態のしっかりした絵が入っており、幸い(?)高橋陽一の元々の絵がどちらかといえば記号的なものであるため、読み手が頭の中で完成原稿の状態を想像/補完しやすいのだ(セリフも、手書きの文字ではなく、通常の出版物と同じフォントを入れているため、読みやすい)。

 また、さまざまなテクノロジーが日々進化している現状と照らし合わせてみても、上記のような“ほぼ下描き”といっても差し支えないクオリティの絵が入っているため、将来的には、生成AIなどを併用できるチーフ・アシスタント級の作画家がひとりいれば、(高橋陽一本人のペンが入らなくとも)完成原稿を作り上げることは比較的容易だと思われる。

 なお、(おそらくは手探りで始めたと思われる)『ライジングサン FINALS』のネーム連載は、コンスタントに回を重ね、2026年5月26日配信の回で、節目の第100話を迎えた(※連載100回を機に、しばらくは休載するとのこと)。

 記念すべきその第100話では、マドリッド五輪の準決勝――日本対スペイン戦の壮絶な「結末」が描かれている(大空翼は、試合とは別に、もうひとつやらねばならない“大仕事”があるのだが、そちらの結末については、第101話以降に持ち越されている)。

 いずれにせよ、先に述べた代表チームの強化云々の話は別にしても、この底抜けに明るい“永遠のサッカー小僧”の生き様が、1981年の連載開始以来、さまざまな世代の読者を元気づけてくれているのは間違いない。現在開催中のワールドカップの動向も気になるところだが、あらためて同シリーズを読み返してみたいと思う。

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