[Alexandros] 川上洋平が自らの“内面”を明かした理由「自分を通して、その曲だったり歌詞だったりを見てほしい」

川上洋平『次幕』(宝島社)

 [Alexandros] 川上洋平が、2025年12月25日に2ndエッセイ『次幕』を刊行した。同書は、音楽と自分自身をめぐる、川上の「今」の思索を綴ったエッセイだ。創作の裏側にある心の動きや、仲間・ファンとの関係、日常の中で見つけた小さな気付きなど、これまでメディアでは語られなかったエピソードが多数収録され、さらには、中国・成都での撮り下ろしカットも掲載されている。

 これまでの人生を振り返った1stエッセイ『余拍』(2022年/宝島社)の刊行から3年、新たに綴った本書に川上洋平が込めた想いとは。音楽ライターの西廣智一が迫った。

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今の自分を書きたいなと思っていた

――過去を振り返った『余拍』から約3年で“現在”を書き留めた『次幕』において、現在の年齢を「人生の折り返し」と素直に捉えていたことに驚きました。川上さんがインディーズデビューしたのは20代後半ですが、そこから考えると40代を人生折り返しと捉えるのって早いんじゃないかと思ったんです。川上さん自身、これまでご自身の人生を「何合目」や「折り返し」のように捉えていたのでしょうか?

川上洋平(以下、川上):それ以前はまったくなかったんですよ。というのも、ここ2、3年の間に死を意識したことがきっかけで。それまではずっと「自分は死なないんだろうな」と思っていましたし、衰えることもないだろうと思っていたんですけど、膝を痛めたときに「ああ、自分もいつか死ぬんだな」っていう自分の体が軋む音が初めて聞こえたんです。そこから、「じゃあ残りの人生をどう全うしていくべきか」ということを、改めて考えるようになって。それが「人生の折り返し」を意識したきっかけですね。

――そのタイミングにまさにこの書籍の話があり、テーマとしても今を綴ることでこれからを考えるヒントにも繋がったという。

川上:そうですね。でも、前の『余拍』がこれまでの半生を書き綴ったものだったので、もし次に何か書くとしたら誰も読んだことないような、自分でも話したことがないような内面の話だったりと、今の自分を書きたいなと思っていたので、それ以前からなんとなく構想はあったんですよ。

――そうだったんですね。そもそもミュージシャンの方はこういうインタビューで音楽の話題中心に聞かれることが多いから、その人の人間性であったり「内面にこういうことを抱えてます。こういう人たちに支えられています」という話って、なかなか表に出てこないですよね。

川上:そうなんですよね。ありがたいことに、自分もインタビューをしていただく機会は多いんですけど、どうしても話題やテーマはバンドのことや、音楽とか作品中心になるし、あまり川上洋平個人の内面から紐解いていくことをされなかったんですよね。それはインタビューの方向性的には当然なのかもしれないですけど、自分としては作品を表層的に話すよりも、自分の内面から見えてくるものによってよりクリアになるんじゃないかと思っていて。でも、誰もインタビューで聞いてくれないんですよ(笑)。だったら、自分で自分をインタビューするような感覚で書いてみようと思い、この『次幕』に至りました。

――僕自身、その方の人間性や生き方についてお話を聞くのが好きなほうでして。実際、そこから作品に繋がるヒントが見えてくることも多いですし、歌詞にもいろいろな変化が顕著に表れていることが多いと思っているんです。この『次幕』にはそういうお話がたくさん詰まっていたので、非常に読み応えがありましたし、表現者としての川上さんの“今”をしっかり感じ取ることができました。

川上:ありがとうございます。実際、そうなっていると思います。本の中では作詞方法、作曲方法についても書いているんですけど、そういったことも今まであまり聞かれたことがなかったですし。「じゃあ、今はどういう思いで曲を作っているのか」っていう部分を深めに書いたりもしています。

――人によっては、そういう制作の裏側を明かすことを嫌がったり躊躇する方もいると思うんですけど、ここまでスタートからゴールまでを赤裸々に書いていることにびっくりしました。

川上:取材で「この歌詞の意味はなんですか?」とか「この曲について説明してください」っていう質問がすごく嫌なんですよ(笑)。それこそ手の内を明かしているような感じがしますし、しかも意味がわかった瞬間、途端に薄っぺらく感じられてしまうし。そうではなくて、もう少し深層の部分から、その作品に書いたものを通して、自分を通して、その曲だったり歌詞だったりを見てほしいんです。そうすることで、「だからこう仕掛けているのか、こういう曲ができるのか」ってより深く理解できるはずだから、この『次幕』ではそういうところはしっかり話したいなと思っていました。

――逆に、ここまで明かすことに対して、ある種の怖さもあるんじゃないかと思いますが。

川上:本当にその通りで。でも、自分の曲を作るスタイルというか、特に歌詞なんですけど、やっぱりさらけ出してナンボなんですよね。だから、この本を書いているのも歌詞を書いているのとあまり変わらないなと気付いてからは、わりと楽になりましたし、とはいっても本当のコアな部分までは明かさないよう、うまくバランスは保てている気はします。

――エンターテイメントとして届けるということは、事実を100見せるわけではなく、数%の虚構を交えることで作品として成立させるわけですものね。

川上:そうです。そういう感覚で読んでもらえると、ありがたいですね。

相手は自分だけみたいな頃の感覚にもう一度立ち返れた

――個人的には『余拍』以降の作詞との向き合い方の変化が印象的でした。メロディがあるからこそ響く歌詞もあれば、文字として読んだときにより強く響く歌詞もあると思いますが、その辺に対して以前はどれくらい意識的でしたか?

川上:活動初期の頃のほうが、あんまり周りを意識しすぎていなかったなっていう気がします。本当に自分が吐き出したいこと、書き出したいこと、そして等身大なものを書いていたんですけど、ありがたいことに曲を聴いてくれたり歌詞を読んでくれたりする人が増えていくにつれて、その人たちと対話するような感じで作っていくように変わっていった。そうなると、自分のことだけには収まらなくなってしまうんですね。それがいい部分もあれば、「もうちょっと書きたいのにな」っていうジレンマが生じてしまうこともあるわけで。そこの葛藤はずっとあったんですよね。1stアルバム(2010年1月発売の『Where's My Potato?』)、2ndアルバム(2011年2月発売の『I Wanna Go To Hawaii.』)ぐらいは周りなんて関係なく、自分の思うことを書いていたんですけど、それこそ3rdアルバム(2012年4月発売の『Schwarzenegger』)ぐらいからだんだん“大きく”見てしまうようなきらいはあったかな。それがずっと続いていたんだけど、『余拍』のときに「自分が今、一番書きたいことを、メモ帳のようにとにかく書いてみよう」って感じで綴っていって。そうしたらスラスラ書けたし、自分の中でもいろいろすっきりできたので、この書き方で作詞もやってみたらいいんじゃないかと思って、この方法で歌詞を書き始めたのがこの1年ぐらいなんですよ。それがまた、1stアルバムを作っているときみたいな感覚に似ていて。『余拍』とこの『次幕』を書いたことによって、まだライブハウスにお客さんもいなかった、相手は自分だけみたいな頃の感覚にもう一度立ち返れたのは大きな収穫でしたね。

――直近のアルバム『PROVOKE』(2025年4月発売)を聴かせていただいたとき、歌詞から受ける印象や感じ方がそれ以前と違っていたことが、僕自身すごく印象に残っていて。そのヒントがまさにこの『次幕』にはあったので、いろいろ納得するものがありました。こういう変化を40過ぎてから迎えるのも、また面白いですね。

川上:そうですね。改めて見つめ直すような期間や瞬間があるかないかで、次の40年の過ごし方が変わってくるなと思ったので。もちろん、このまま立ち止まらずに突き進むこともできたんでしょうけど、1回ここで小休憩を挟むことで、よりいろんな意識しながら進めるなと思ったので、こういう本を書いてよかったと思っています。

――特に日本の音楽シーンはサイクルが早いから、リリース間隔も短くなりがちですし、それによって立ち止まることもなかなか難しくなる。でも、立ち止まる勇気を持てるか持てないかで、その先の10年が大きく変わるんじゃないかと思うんです。

川上:本当にそうだと思います。僕ら、1stアルバムを作って東名阪ツアーをやりきったあと、東京公演の打ち上げのときに事務所の人から「もうこの作品は終わったから、次の作品に取り掛からないとね」と言われたことがあって。そのときはデビューできたことが嬉しかったくらいだから、「もう次の作品を作っていいんだ!」と後押しされたことも嬉しくて、どんどん作らなくちゃって思っていたんです。でも、今はちょっとそこにブレーキをかけて、じっくり作りたいなって思っているところです。 

川上洋平が川上洋平に向き合う一番大事な瞬間だった

――この書籍のタイトル『次幕』は、映画における「字幕」と人生における「次の幕」をかけたものかと思います。ということは、この書籍は川上洋平という人物を説明する際の「字幕」でもあるわけですよね。

川上:そうですね。デビューから15年間、曲を作って人々に聴いてもらった上で、本当に捉え方は重要だなと思っているけど、僕は「この曲はこういう意味です、こういう意味合いを持って作ったので聴いてください」って言いたくないんですよね。そこは聴き手の方の捉え方次第だとずっと言ってきたんですけど、「もう少し自分として解説するなら、どうするだろうな」と思ったときに、作品を説明するんじゃなくて自分を説明したほうがいいなと思ったんです。自分の今思っていることについてのエピソードとか、一見「それって作品に繋がるのかな?」って思うかもしれないけど、そこを通じて僕のことが何となくわかってきて、さらに曲についてもより見えてくるものがあるんじゃないかなって。それこそさっき話したように、本来はインタビューでそういうことを聞いてほしいなと思うんですけどね。そういう意味では、この『次幕』は川上洋平の字幕説明になっていると思いますし、それと同時に僕が作ってきた楽曲についてもより一層伝わるんじゃないかなと思っています。

――なるほど。

川上:僕、映画自体はもちろん好きなんですけど、映画のメイキングも好きで。でも、監督や作り手側としては、本来ならそういうメイキングって観てほしくないんじゃないかと思うんですよ。「この大爆発シーンはCGを使って撮ったんですよ」とか「トム・クルーズがこうやって飛んだときも、実はワイヤーがついていたんだ」とか、普通はバラしたくないことですよね。僕自身も事実を知って拍子抜けしてしまうかもしれないけど、それでも裏側を知りたいなっていう気持ちが強いから、今回の『次幕』はそこのバランスをうまい具合に取った、自分の中でのメイキングでもあるわけです。最初、タイトルは『次幕』じゃなくて『川上洋平大図鑑』の予定だったんですよ(笑)。

――さすがにテイストが……(笑)。

川上:なので却下されました(笑)。でも、メイキングという意味ではあまりズレてない気がするんですよ。

――確かに、おっしゃる意味はよくわかります。こと音楽に関しては、アーティストが亡くなったあとにデモテイクや別バージョンが凝縮されたボックスセットが、本人が意図しない形でリリースされることも多いじゃないですか。

川上:映画のメイキングは好きだけど、そういうのはどうなのかなと思いますけどね。でも、どれだけ説明しようが、どんなに嘘をつこうが、やっぱり作品というものには嘘はないと信じているから、結局はその捉えた人次第なのかなと。例えば、僕は美術館によく行くんですけど、絵の横に「何年に、どういう過程で描かれたか」と説明が書いてあったりするじゃないですか。あれがあんまり好きじゃなくて。その絵をパッと見て「すごいな、こういう思いが込められているのかな」と思ったあとに解説を読むと、自分が想像した感じと全然違うこともあって、面白かったりもするんですけど、「こう捉える自分って変なのかな?」とか感じてしまうこともあったので、あまり見ないようにしているんですよ。そういう意味では裏側を知りたくない場合もあるので、そこはやっぱりバランス次第かなと思います。

――最後になりますが、自分自身を説明する際の「字幕」として書かれた『次幕』という書籍を通して、川上さんから見たこの本の中の川上洋平という人はどのように映りましたか?

川上:想像通りの人間でしたね(笑)。何となくわかってはいたんですよ、自分はどういう人間かとか、自分はどうしたいのかとか。でも、それを言語化していなかった、それを怠っていたところもあったんですよね。でも、どこか内観とかセラピーに通うような感じもあって、自分の中ではスピリチュアルに捉えてしまっていて。「ちょっと気色悪いな」とか「そんなこと、ロックバンドのボーカルが気にしてどうする?」みたいに思っていた節もあったんですけど、その気持ちを一旦隅に置いてじっくり見つめ直したときに、「そうだよな」とさらに納得できたこともあったし、スッキリした部分や新たな発見もあったから、むしろやってよかったですし、川上洋平が川上洋平に向き合う一番大事な瞬間だったなと改めて思いました。

■書誌情報
『次幕』
著者:川上洋平
価格:1,870円
発売日:2025年12月25日
出版社:宝島社

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