宅配所で「覗きたい衝動」が止まらない…第62回文藝賞受賞作『BOXBOXBOXBOX』
坂本湾著『BOXBOXBOXBOX』(河出書房新社)が11月17日に発売された。
薄霧のたちこめる宅配所。粛々とはたらく作業員たちのあいだで、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。
一日中、ほとんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、箱の中身と妄想の「答え合わせ」をしたいという欲望が安を蝕んでいく。
あるとき思いもよらぬ理由から、決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになってーー。
「テープを引き剝がし、蓋を開けて、覗き込みたい」宅配所で箱を仕分けるうちに生じた、禁断の衝動ーー。新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。
本作は第62回文藝賞受賞作。贈呈式は11月12日(水)に明治記念館にておこなわれ、坂本湾へ正賞の記念品、副賞が贈られた。
贈呈式では選考委員が登壇し、「選考会のなかでも一番に強く推した作品。ぜひ受賞作を読んで、それぞれが『箱』というものについて考えてみて欲しい」(小川哲)、「最後まで緊迫感をもって描かれていて、非常に面白く読んだ。私も全て読み切れていないかもしれないが、そのわかりにくい部分も含めて私は評価したい」(角田光代)、「(単調で過酷な労働について書かれていて)候補作の中で最も親近感をおぼえた作品。新しい小説を書き続けて、あの世とこの世を架橋(かきょう)するようなことを続けていただきたい」(町田康)、「冒頭からぐっと引き込まれて、『箱』の謎性のようなものにぐっとつかまれて、ぐっとつかまれたまま引きずられていくような感覚があった」(村田沙耶香)と、受賞作『BOXBOXBOXBOX』の講評を述べた。
■書誌情報
『BOXBOXBOXBOX』
著者:坂本湾
価格:1,650円(税込)
発売日:2025年11月17日
出版社:河出書房新社
撮影:小原太平