天下を獲った豊臣兄弟の実像を解き明かす『豊臣の兄弟』 東大教授・本郷和人の最新刊
『豊臣の兄弟 秀吉にとって秀長とは何か』が2025年10月28日に河出書房新社より発売された。
【画像】豊臣の兄弟という関係に焦点を当てた、東京大学史料編纂所教授・本郷和人の最新刊
『豊臣の兄弟 秀吉にとって秀長とは何か』は東京大学史料編纂所教授・本郷和人の最新刊。天下を獲った兄弟の実像、豊臣政権の本質を徹底解説。天下統一を成し遂げた豊臣秀吉と、その陰で兄を支え続けた弟・豊臣秀長という“兄弟”の関係に焦点を当て、豊臣政権の本質を描き出している。
1582年、本能寺の変で織田信長が倒れると、家臣の羽柴秀吉は「中国大返し」によって明智光秀を討ち、天下人への道を駆け上がった。その成功の裏には、常に冷静沈着に采配を振るった弟・秀長の存在があった。本書では、兄・秀吉の「常識を超えた発想」と、弟・秀長の「調整力・統治力」という対照的な資質が、いかにして豊臣政権を築き上げたのかを解き明かしている。
秀吉が天下を掌握した後も、秀長は内政や外交の要として兄を支え続けた。だが1591年、秀長の早すぎる死によって豊臣政権は均衡を失い、やがて崩壊へと向かっていく。本郷氏はこの兄弟関係を通じて、戦国時代の権力構造のみならず、「リーダーと参謀」「カリスマと補佐役」の関係性が現代社会にも通じることを示唆している。
本書の章立ては、「秀吉の異質性」「戦う秀吉の強さ」「天下人with秀長」「豊臣政権とは何だったのか」と続き、兄弟それぞれの資質、組織運営の手法、そして政権崩壊のメカニズムまでを多角的に検証。
著者の本郷和人氏は、日本中世政治史の第一人者。『徳川家康という人』『鎌倉殿と13人の合議制』『日本史の法則』などの著書で知られ、鋭い史観と平易な語り口で多くの読者を魅了してきた。「豊臣兄弟」の知られざる実像に迫る本書は、戦国史の新たな定番として注目を集めそうだ。
まえがき
■第一章 秀吉の何が、他の武将と違うのか
豊臣家の人々/若き秀吉の放浪時代/織田家の小者として/不明の人、秀吉/「家」が理解できない秀吉/容赦なく領地を没収/武士の原理に従わない秀吉/秀吉の人材評価の原則/七本槍の「その後」/デスクワークを重視する秀吉/秀吉にとって、大名の条件とは?/異次元の人材評価/権力者の親族たち/「血」を否定する秀吉/権力者の血縁問題/常識が通用しない秀吉/「血」と「家」は別/能力か血筋か/秀吉の異質性
■第二章 戦う秀吉は、なぜ強かったのか
秀吉の結婚/墨俣一夜城の伝説/竹中半兵衛は本当に名軍師?/出世する人しない人/軍事指揮者として頭角を現す/近江長浜時代の大失敗/一国を攻め取れという命令/信長が与えた権限/織田家司令官たちのメカニズム/信長が変えた「戦争」の意識/秀吉の大ピンチ/常識に終止符を打つ包囲戦/戦うのも人間である/「兵站」にもとづく秀吉の戦術/天下人の条件とは/信長の軍事の根幹/「本能寺の変」は必然だった?/秀吉に恩を売る毛利/京都へ。走りだす二万人/軍隊移動の名手、秀吉/中国大返しの秘策/秀吉の非常識が、光秀の常識を覆す/戦国が、さらなる混沌に/考えるな、感じろ/大規模作戦を遂行する秀吉のスタッフ/織田家重臣たちの「天下人」争い/信長チルドレン同士の戦い/軍隊を動かす天才、秀吉/天下人になるための方法論/秀吉の「正統性」/秀吉の「高コスト体質」/家康との対戦/秀吉の戦術を逆手に取る家康/なぜ秀吉は大盤振る舞いするのか/家康の服従と官位官職/豊臣体制と秀長/史上最大の作戦、小田原攻城戦/戦国時代の情報弱者/日本統一。そして家康に関東を
■第三章 天下人 with秀長
秀長、歴史に登場/留守番役から但馬竹田城城代へ/地道に戦う秀長/戦国の、リアルな土地感覚/当時の百万石は百万石もない⁉/まだあった「領有」の曖昧さ/本能寺から天下人へ。秀長の大功績/秀長、一世一代の大舞台/兄を支えた秀長の能力/難治の国を見事に統治/秀長家重臣ランキングベスト3/大和大納言家家臣の特徴/秀長の謎の家臣/行政、内政のスペシャリストたち/家臣から見た秀長の役割分担/秀長の健康悪化と有馬温泉/家康上洛。外交担当者としての秀長/「豊臣」の果たした役割/秀長はお金に汚い?/大和大納言家の終焉
■第四章 豊臣政権とは何だったのか
秀吉がふたりいる?/兄弟が並び立つための条件/秀吉と秀長は理想的/秀吉は徹頭徹尾、軍事の人/秀長が生き延びる条件/秀吉家臣団の報酬/家康の家臣団は古典的/家康にもいた三成タイプ/家康の家臣待遇は秀吉の半分/「家」のヴィジョンがない秀吉/天下人 without 秀長/京都の権力者、秀吉/「京都の権力者」の特徴/天下布武には興味がない/大陸進出の真実/秀吉が歴史の中で果たした役割/秀長と秀吉
あとがき
■著者 本郷和人(Kazuto Hongo)
1960年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。博士(文学)。
専攻は日本中世政治史、古文書学。『大日本史料』第5編の編纂にあたる。『考える日本史』『日本史の法則』『鎌倉殿と13人の合議制』『徳川家康という人』(河出新書)、『新・中世王権論』(文春学藝ライブラリー)、『武士とはなにか』(角川ソフィア文庫)、『歴史学者という病』(講談社現代新書)など著書多数。
■書誌情報
『豊臣の兄弟』
著者:本郷和人
価格:990円(税込)
発売日:2025年10月28日
出版社:河出新書
■既刊情報
『徳川家康という人』
著者:本郷和人
価格:935円(税込)
発売日:2022年10月27日
出版社:河出新書
『鎌倉殿と13人の合議制』
著者:本郷和人
価格:891円(税込)
発売日:2022年1月27日
出版社:河出新書
『日本史の法則』
著者:本郷和人
価格:935円(税込)
発売日:2021年7月27日
出版社:河出新書
『考える日本史』
著者:本郷和人
価格:924円(税込)
発売日:2018年11月22日
出版社:河出新書
※電子書籍も発売中。詳細は各電子書籍ストアでチェック。