ジャンプ連載“ダメ人間”ギャグ漫画がまさかのアニメ化!『超巡!超条先輩』根強い人気の理由

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていたギャグマンガ『超巡!超条先輩』が、2026年にTVアニメ化されることが決定した。連載終了後のアニメ化発表という珍しい流れだが、そこにはファンからの熱狂的で根強い支持が関わっているのかもしれない。

 なぜ同作は多くの人を夢中にさせているのか。本稿ではその魅力とアニメ化にあたっての注目ポイントを紹介していきたい。

 同作は『週刊少年ジャンプ』の2024年11号から連載が始まり、6月9日発売の2025年28号で完結を迎えた。作者は『左門くんはサモナー』を手掛けた沼駿だ。作品の舞台となるのは、日夜さまざまな事件が発生するという珍宿・傾奇町の交番。超能力を使うことができる警察官・超条巡と、柔道で怪力を身に付けた新人女性警官・一本木直という凸凹コンビが、ドタバタコメディを繰り広げていく。

 テンポのよい掛け合い、不条理な展開、最後に主人公が痛い目を見て終わる「トホホ」型のオチなど、沼駿の作風がフルパワーで炸裂しており、さながら『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の現代版といった安定感のある面白さだった。連載中からファンの熱気は高く、KADOKAWA主催の「次にくるマンガ大賞」コミックス部門では2024年に6位、翌2025年には3位を獲得。連載終了後も「終わるのが早すぎた」「もっと読んでいたかった」という声が上がっていたため、今回のアニメ化は待望の復活劇と言えるだろう。

 そんな同作最大の魅力は、主人公・超条の“ダメ人間すぎる”キャラクター性にある。警察官でありながら勤務態度は「すこぶる悪い」と評されており、パトロールの最中に公園にいた小学生たちに煽られて全力のハイパーヨーヨーを披露し始めるほど。ほかにも対戦ゲームで小学生をハメ技で倒して勝ち誇ったり、退職したバイト先に顔を出して後輩に説教したりと、その行動からは大人げなさがあふれ出している。

 とはいえ正義感がないわけではなく、「大人としてはダメなのになぜか憎めない」という絶妙なバランスで描かれている印象だ。

 同時期の『週刊少年ジャンプ』では『僕とロボコ』や『ウィッチウォッチ』などの人気ギャグマンガが連載されていたが、それぞれの強みは「パロディ」や「コント的な面白さ」にある。それに対して同作の武器は“ダメ人間ギャグ”にあり、人間のしょうもなさを愛らしく描いているのが大きな魅力だった。

前作から続く“外道主人公”の系譜

 ブラックなギャグという作風は、沼駿の前作『左門くんはサモナー』から一貫しており、前作の主人公・左門召介もヒロインへのウザ絡みや外道すぎる言動で多くのファンを爆笑の渦に巻き込んでいた。

 ただし、超条はまた一味違ったタイプのダメ人間。大人げない言動で直に嫌がらせをするものの、最後は腕っぷしで成敗されてしまう小物感があり、ある意味愛嬌を感じさせるキャラクター像だ。また警察官として良識のある言動をとることも多く、ダメ人間と時折見せる“善人ムーブ”のギャップが好感度につながっている。

 他方で沼駿作品に欠かせないのが、魅力的なヒロインの存在。『左門くんはサモナー』はもちろん、それ以前の短期連載作『モロモノの事情』に遡っても、沼駿の描くヒロインはかわいらしさと芯のある強さを兼ね備えていた。『超巡!超条先輩』でもそれは健在で、直は無骨でピュアな性格、柔道で鍛えた腕っぷし、そして時折見せる女性らしさによって読者を魅了していた。

 さらに脇を固めるサブキャラたちも魅力的だ。一見真面目だが倫理感がめちゃくちゃなポンコツロボット警官のローボくん、元相棒の巡に対して異様なほどの執着心を持っているキャリア組の犬養由基など、ひと癖もふた癖もあるキャラクターたちが登場する。アニメではその言動に声優が生き生きとした感情を吹き込むことで、ただでさえ強烈な個性がより際立つことになりそうだ。

 なお、アニメ制作を担当するのはアルボアニメーション。ジャンプ読者にとっては『ぼくたちは勉強ができない』などで知られるスタジオで、監督は『サマータイムレンダ』などに携わった山元隼一が務める。沼駿作品特有の畳みかけるようなボケとキレのあるセリフは、間違いなくアニメ映えするはず。超条巡という“最低で最高の男”がどれほどパワーアップして映像化されるのか、期待するばかりだ。

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