【漫画】自分に絶対なびかない人を好きになってしまったら? 30年の片思いを描く『初恋の女の子との30年間の恋愛の話』
愛情の深さは正確に測れるものではない。ただ、その人を想っていた時間が長ければ長いほど、その想いは確かなものなのかもしれない。Xに9月下旬に投稿された『初恋の女の子との30年間の恋愛の話』は、ひとりの女性に想いを寄せ続ける男性の30年間の記憶を収めた読切漫画だ。
主人公だけではなく、主人公の想い人でもある涼子にも自分自身を重ねたくなる本作の作者・朝日ねこさん(@asahinekoko)に、制作におけるこだわりなど話を聞いた。(望月悠木)
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30年間だった理由
――男女の長期間に及ぶ恋愛模様を描いた作品でしたね。
朝日:実際に会ったことのある女性の話をベースにした作品です。すごく美人で、ただ美人であるゆえに、きちんとした恋愛ができないという悩みのある人でした。そのときに感じた気持ちを、自分自身の立場に置き換えて漫画にしました。
――涼子の思考や言動も、その女性をモデルに決めていったのですか?
朝日:そうですね。僕自身も普通の恋愛に対して憧れもありますが諦めている部分もあり、彼女の自暴自棄になる気持ちや干渉されたくない気持ち、でも心のどこかでそんな自分を理解して欲しいという気持ちには共感できる部分が多くありました。
――なぜ30年間だったのですか?
朝日:男女の関係にならない片思いの中で、恋心が情のようなものに変わっていく様子を描きたくて30年にしました。30年の中で変わっていく人物の考えに合わせてストーリーを組み立てていきました。
――涼子を想うあまりの主人公の言動に、切なさを覚える瞬間も多かったです。
朝日:僕は恋愛漫画を描く際、自分自身の気持ちを乗せることが多いです。僕も好きな人と長く交流があり、その中で「彼女には僕なんかではなく、他の人ときちんと幸せになってほしい」という思いがありました。この気持ちは他の漫画でもたびたびテーマにして描いています。
――主人公の名前は伏せられたままだった狙いは?
朝日:普段エッセイ漫画を描いているのですが、本作でも名前を隠すことで少し自伝的な雰囲気を持たせたかったため、名前を伏せることにしました。
――誰もが好きになることに説得力を持たせなければいけないため、涼子の作画は大変だったように思います。涼子を描くうえで意識したことは?
朝日:涼子ちゃんは、周囲からは外見の良さしか評価されず悪い男にハマってしまうという依存体質にな人に見えるかもしれません。 ただ、主人公から見た涼子ちゃんは良い面も悪い面もひっくるめて、憧れの女性としてキラキラと輝いて見えるように描きました。
――特に苦労した涼子のカットはどこですか?
朝日:そもそも30ページの読切漫画を描くこと自体久しぶりだったので、描き上げるハードルを思いっきり低くして制作を始めました。状況描写などの難しい構図は描かず、印象的な顔のアップを多用しているのにはそういった理由もあります。また、表情を描くのは一番気持ちが乗るところなので、「涼子ちゃんのバカ」と言われるシーンや、その後の「大っ嫌い」などには特に気持ちが入りました。
――とても思い入れのある作品なのですね。
朝日:はい。実は5年前に描いた作品なのですが、機会があればラストの展開も含めて別の形で描き直したいと思っています。
――最後に、今後の漫画制作における予定など教えてください。
朝日:10月18日より、「マンガUP」(スクウェア・エニックス)で『引きこもり天才魔法書技師、魔法書経営はじめます』という漫画が連載開始します! 原作付きの異世界ファンタジーものですが、僕の得意とする魅力的で可愛い女の子がたくさん登場します。今はこちらの作画を精一杯頑張り、いつまで続くかわからない漫画家としての生活を、少しでも長く続けることが目標です。