「子どもたちの笑顔が見たい」宝島社、新ブランドはおもちゃ!『宝島社トイズ』発起人が語るワクワクへの探究心

『宝島社トイズ』のおもちゃを持ち笑顔あふれる清水弘一氏。新ブランドへの熱い思いを語ってもらった。

 付録つき本・ムックで知られる宝島社が新たに挑むのは、子ども自身が心から「欲しい」と思える玩具づくりだ。立ち上げた新ブランド『宝島社トイズ』の第一弾は、『うんちーず』という“うんち”をモチーフにしたパッキングトイズ。子どもたちが大笑いする定番ワードをキャラクター化することで、購入する体験そのものを「ワクワク」「ドキドキ」に変えたいという狙いがあった。発売直後から大きな反響を呼び、『うんちーず』はキャラクター展開や絵本化などが進行中だ。

 今回の『宝島社トイズ』を手がける清水弘一氏が強調していたのは、「買った子どもを決して悲しませない」という思いである。たとえ期待した種類が出なくても「どれが出ても楽しい」と思えるよう工夫を凝らし、子どもが泣いたりがっかりしたりしない設計を徹底している。本インタビューでは、『宝島社トイズ』立ち上げの経緯や開発の裏側、コンビニの売り場で掘り起こした成功事例、そして合体玩具や女の子向けキャラクターなど今後の展望まで、現在と未来について率直に語ってもらった。

第一弾の『うんちーず』がいきなり大ヒット!

『宝島社トイズ』の第一弾でいきなり大ヒットを記録した『うんちーず』のラインナップ。
キャラクターのかわいさだけではなく、触り心地もなんとも病みつきになる。

――「宝島社トイズ」立ち上げのきっかけを教えてください。

清水:もともと宝島社では、知育玩具やキャラクターグッズを付録にした本を数多く手がけていました。知育玩具付き書籍は両親や祖父母などが子どもに買ってあげる定番となってきましたが、私たちとしては「子ども自身が心から欲しいと思うもの」をつくりたい、という思いが次第に強くなっていったのです。

 そこで発想したのが子どもたちにとって「買うこと自体が体験になる」です。カプセルトイのような「何が出るかわからない」ドキドキ感を、出版や玩具の領域で形にできないかと考えました。その試みのひとつが「パッキングトイズ」シリーズでした。当初は教育的な素材や知育系のキャラクターも候補に上がりましたが、子どもの心をとらえる圧倒的なワードとして浮上したのが「うんち」だったんです。

第一弾の『うんちーず』のパッキングトイズは12種類。第二弾も12種類で展開。どれも損した気分にならない『うんちーず』なのも嬉しい。

ーー宝島社らしい自由な企画ですね。

 子どものころ、誰もが「うんち」や「おなら」と口にしただけで大笑いする時期があります。その普遍的な楽しさを商品化し、かわいらしいキャラクターに仕立てれば、子どもが自分で欲しいと言える商品になるのではないか。そう考えたのが始まりです。

――とはいえ『宝島社トイズ』第一弾が「うんち」というのは結構勇気がいると思います。

清水:社内ではいくつか候補があったのですが、会議を重ねるうちに自然と「やっぱりうんちがいいのではないか」と、社長を含む役員クラスの会議で正式に決定していきました。誰が最初に言い出したのか、はっきり覚えていないほど、議論のなかで自然に決まっていった感じでした。

――役員も発想が自由です。

清水:「なぜ“うんち”だったのか?」と改めて考えみると、子どもたちにとって一番身近で、一番ストレートに笑いを生む存在だったからです。会議で「うんち」と決まった瞬間は、逆に清々しくて「これでいこう」と一致団結したのを覚えています(笑)。

「最下段の目立たないスペース」を使ったコンビニヒットの意外な理由

大人にとっては昔縁日でよく目にしたようなリアル危険生物。クオリティは光ったり伸びたり色が変わったりと非常に高いのも特長だ。
海洋生物バージョンも。よく見ると表情も豊かでどれも精巧につくられているのがよくわかる。

――発売までにはどのくらいの時間がかかりましたか。

清水:開発にはおよそ1年半を要しました。商品設計からパッケージ、販売先の選定まで、何度も試行錯誤を繰り返しました。第1弾は2025年1月に発売したのですが、2ヶ月間で6万個を売り切り、続く第2弾は23万部の大ヒットになるなど、予想の5倍のスピードで売れています。コンビニでは雑誌棚の最下段にある「目立たない」と言われるスペースで売り上げを伸ばしたことも大きな成果でした。大人だと腰を曲げないと見づらいのですが、子どもの目線では下段がちょうど視線に入る高さなんですね。大人には見過ごされがちな場所が、子どもにとっては宝の山になったわけです。

――なるほど。コンビニや取次も協力的になったわけですね。そうしてヒットした『うんちーず』というキャラクターについて教えてください。

清水:「うんち」をモチーフにした複数のオリジナルキャラクターを『うんちーず』と名付けて、IP(知的財産)として展開しています。キャラクターは現在12種類以上あり、それぞれに表情や個性をもたせています。現在は絵本やマグネットブックなど多角的な展開を進めています。

『うんちーず』シリーズのおもちゃ。かわいいうんチーズを握ると丸い物体が飛び出てくる仕様。
むにゅっとした触り心地が病みつきになる。

 これまで宝島社は「本からキャラクター」へと発展させるケースが多かったのですが、今回は逆に「キャラクターから本」へと展開する挑戦をしています。子どもたちに玩具を通して愛着を持ってもらったキャラクターを、ストーリーとして読み物に展開していく。これは出版社としても新しい試みで、IPビジネスの可能性を探る挑戦でもあります。

2025年8月30、31日に行われた東京おもちゃショーに初出展。
子どもたちの笑顔のために開催中はビニールプールを用意して縁日のようにイベントを行なった。

――開発で苦労した点は?

清水:やはり強度の問題です。子どもは大人以上に想定外の遊び方をするため、通常の設計ではすぐに壊れてしまう恐れがありました。そこで、従来の付録や玩具づくりで培ったノウハウを活かしながら、工場と何度も調整を重ねました。伸ばしたり、変形させたりしても壊れにくく、それでいて安全な素材を選定するのは大きな挑戦でした。

 現在開発中の恐竜や昆虫のフィギュアでは組み立てが簡単すぎても難しすぎても飽きてしまうものです。子ども向けの難易度を試行錯誤して「できた!」という達成感を味わえるようにかなり工夫をしています。

簡単すぎず、かつ難しくもない組み立てるタイプの昆虫フィギュア。達成感や満足感を味わってもらう探求はどのアイテムにも欠かさない。

――今後の『宝島社トイズ』の中長期的な展望を教えてください。

清水:「パッキングトイズ」シリーズは引き続き展開していきますが、それに加えて「合体できる玩具」の開発も進めています。たとえば、一つひとつは単体で遊べるものの、複数を組み合わせると巨大ロボットになるようなイメージです。子どもが「また欲しい」と思える連続性を持たせ、収集する楽しみを提供したいと考えています。

――宝島社のパッキングトイズは、アタリが多いのが印象的です。

清水:従来のハズレが多い「クジ」的要素ではなく、子どもががっかりすることがないように配慮しています。たとえハズレが出たとしても満足してもらえるように、かなり意識しました。せっかく買ってもらったのに子どもが泣いてしまわないようなことはどの商品においても大切にしています。

――子どもへの優しさが溢れているのですね。

清水:女の子向けには「かわいいおじさんの妖精」をベースにした新キャラクターも企画しています。動物キャラのように着せ替えができたり、恐竜に変身したりする仕掛けを取り入れたりと、幅広い層に楽しんでもらえるようにする予定です

女の子向けに開発されている妖精シリーズ。
ちょこんと座っている佇まいだけでかわいいが、着せ替えや乗っけることもできるタイプでおじさんの悲哀を昇華させてくれるよう。

 従来の宝島社は他社と比べてオリジナルIPが少ない出版社でした。しかし今後は自社発のIPを積極的に開発し、自由な発想を活かした商品展開を強化していきたいと考えています。

――最後に、読者や子どもたちへのメッセージをお願いします。

清水:私たちが届けたいのは「ドキドキ・ワクワクする体験」です。近年の買い物はネットで完結し、アルゴリズムが「あなたにはこれ」と選んでくれる便利さがありますが、その一方で“予想外の出会い”や“衝動買いの楽しさ”が失われつつあります。

 宝島社トイズを通じて、子どもも大人も「こんなの欲しかった!」という新鮮な驚きを感じてほしい。そして笑顔になってほしい。それが私たちの願いです。雑誌文化が培ってきた“立ち読みの楽しさ”や“本屋での衝動買い”を、玩具の世界に引き継いでいきたい。これからも宝島社らしいユニークな発想で、皆さんに新しい体験を届けていきます。ぜひ期待していてください。

「子どもも大人もドキドキ・ワクワクするおもちゃをこれからも作っていきますので期待していてください!」

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