【漫画】隣人が夜型だと生活音がキツい? 壁ドンの果てに爽やかな結末が訪れる『パーソンズ・ネクスト・ドア』
ーー創作したきっかけを教えてください。
なかの:本作は漫画の賞レースに出すために描いた漫画でした。「登場人物は2人だけ」という縛りがあったので、直接的に関わらない2人の掛け合いを描けたら面白いんじゃないかなと思ったことが創作のきっかけです。
ーー直接的に関わらない関係として、隣人を選んだ理由は?
なかの:私も一人暮らししてるのですが、隣に住んでる人のことをあんまり知らないなと思って。でも、お互いに気を遣いながら生活しているなか、縁というものもあるのかなと思い、本作のようなお話になりました。
ーー印象に残っているシーンは?
なかの:「人生は食玩か…」という台詞のシーンです。映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』で「人生はチョコレートの箱のようなもの」という台詞があるのですが、日本人にはチョコレートの箱ってピンとこないかなと感じていて、このお話ではチョコレートよりも食玩の方がぴったりはまるんじゃないかなと思って台詞を当てはめました。この台詞を作品が盛り上がる場面にうまく持ってこれたのかなと思い、印象に残っているシーンです。
ーー学校で先生を務める女性と漫画家の男性という、2人のキャラクターについて教えてください。
なかの:私、本業は学校の先生なんです。本作を描くにあたって締め切りが迫ってたこともあって、2人は私にとってなじみのある漫画家と先生ということにしました。
漫画家と学校の先生は対照的な仕事だと思います。とくに生活のリズムは大きく異なるでしょう。ただ対極の生活を送っていても、内に秘めたるものは一緒というところを意識して2人を描きました。
ーー本作の結末でも2人が直接出会う様子は描かれませんでした。
なかの:私は漫画を描くとき、最後はハッピーエンドにしたいと思っています。もちろん最後に2人が顔を合わせる結末を描くこともできたかもしれませんが、本作は最後に2人が出会い「よかったですね」と終わらせる話ではないと思いました。
構想段階から2人は顔を合わせないと決めて、そのうえでどうやって2人のつながりを表現しようかと考えながら終盤を描きました。
ーーマグネットをドアに張るアイデアはどこから?
なかの:過去にSNSでアパートの共用スペースに住人がマグネットを貼って、文章を完成させるといった投稿を見かけました。そのときから「マグネットが漫画のアイデアとして使えるんじゃないか」と思い、ネタとして長らく温めていました。
ーー2人の別れとなるドアのシーンのあと、女性が車を運転しながら歌うシーンが描かれました。
なかの:マグネットでつくった「さらば」の1ページで、本作を終わらせてもよかったかと思います。ただ最後に余韻を持たせたかったこと、女性の人生はもっと先まで続いていくといった含みを持たせたかったので、歌いながら車で走っていくシーンを入れました。
ーー学校の先生を務めながらの漫画創作は大変かと思います。
なかの:漫画は趣味でずっと描いてきました。数年前からプロの漫画家を目指そうかなと思い、商業媒体の賞へ応募するようになりました。ただ仕事が忙しいので、平日は時間を見つけて描き、休日は漫画をガンガンと描いています。
ーー創作のモチベーションはどこから?
なかの:学校の現場でいろんな人と出会うなか、いろんな驚きや感動があります。とくにこどもの成長を近くで見れることは、やっぱり幸せなことだと思います。そんな驚きや感動を漫画に落とし込めたらいいなと思い漫画を描いています。
ーー今後の活動について教えてください。
なかの:私の作品はこどもが主人公の作品が多いです。こどもの成長だけでなくて、人生の無常感とか「どうにもならないな」ということを受け入れながら、人が前に進んでいくような漫画が描きたいなと思っています。
先生を務めるなか、こどもも人生をちゃんと過ごして、成長だけでなく挫折など、いろんなことを経験しているんだなと感じています。成功体験だけでなく失敗などのネガティブなものも含め、こどもを主人公にした物語を描いていきたいです。
【漫画】なかのの過去作、小学生の葛藤と解放が描かれた『女神とピアニスト』はこちら